多義語との向き合い方2

多義語との向き合い方2

では、以下にいくつか多義語の例を挙げてみますので参考にしてみてください。

 

 

fine「良い・元気な・細かい・罰金」

 

fineの頭三文字finは「終わり」を意味します。finishやfinalを見ても分かるように、「終わり」に通じる単語にはfinがついていますね。それが「核」です。

 

fineにおける「核」も同じで、「終わり」の意味から様々な意味へと派生していきます。

 

たとえばあなたが何かを作っているとします。美術品の創作やプラモデルなどの工作を思い浮かべると分かり易いでしょうか。
その作品を「作り終えた」とき、それはあなたにとって「完成されたもの」であり、完成されたものはきっとあなたにとって「良いもの」であるはずです。
そこから「良い」という意味に繋がります。

 

「元気」というのも、似たような流れを受けて体調不良や病気のない「身体的に完成した状態」を表すところに通じています。

 

「細かい」は、完成された良いものは「細部にわたって作り込まれている」というところからその意味が生まれていると考えてみてください。

 

そして「罰金」は、違反などの処理を「お金を払って終わらせるもの」というところからきています。

 

「終わり」という「核」を出発点として、様々に意味や解釈が広がっていく様子をイメージすることができましたでしょうか。

 

 

bar「棒・障害・裁判所・酒場・(数学の)中間値」

 

barの「核」は「横たわる棒」です。

 

そこからさきほどのfineのようにイメージを広げます。

 

目の前で棒が横たわっていれば邪魔だから「障害」、

 

障害物によって仕切りが多く置かれた場所ということで「裁判所」(傍聴席をはじめ、原告側や被告側の人が座る位置、裁判官のいる席は仕切りや机によって分断されています)、

 

お客と店員がカウンターという仕切り越しにお酒を飲む場ということで「酒場」(ちなみに酒場のバーカウンターはもともと一本の木を切り倒したものであるため、その意味でも「横たわる棒」そのものを表しています)、

 

そして「(数学の)中間値」を表す記号(-)は文字通り横棒です。

 

そんなふうに、「裁判所」や「酒場」などには何の関連性もなさそうでも、根っこの部分では同じ「核」を共有しているわけですね。

 

 

charge「請求する・料金・責任・告発する・充電する」

 

chargeの「核」は「車に荷を積む」です。

 

何かを運ぼうとするときに利用する荷車を思い浮かべてください。そこがスタート地点です。

 

積み込む荷物は当然どこかへ運ぶだけの価値がある物のはずです。そこから「積まれた荷物へ支払う対価」という発想が生まれ、「請求する」や「料金」という意味に派生します。

 

また、荷物を運ぶ際には無事に目的地まで届ける「責任」が伴いますからこの意味が生まれ、

 

さらに責任を全うできなかった場合には訴えられても仕方がありませんから「告発する」という意味でも用いるようになります。

 

そしてさらに別の角度から見ると、「車に荷を積む」行為は「荷台を物で満たす」ということですから「何かをためる」、つまり「充電する」の意味が生まれているというわけです。

 

 

「核」はなるべく指導者が教えた方が良い

 

このように、「核」を出発点とする意味的な派生という観点から多義語を考えると、バラバラだったピースがまとめられ、ギュッと凝縮された一つの形、本来の姿、そして本質が見えてくる気がしないでしょうか。

 

 

ただ、知識量が少なく発想力も乏しい生徒が自主学習によってこうした「核」を学びながら覚えていくのはとてもハードルが高く困難で、時間もかかります。

 

確かに辞書を引けば「核」や語源などについてそれなりに説明されている場合もありますが、やはり指導者が直接「つまりこういうことだ」と説明をしてあげた方がベターでしょう。

 

授業中に取り上げて「核」を説明した後で「じゃあどうしてfineは罰金という意味にもなると思う?」などと考えさせながら教えていけば、そのプロセス自体が生徒にとっての印象的体験となって記憶にも定着しやすくなります。

 

 

ただし、一方ではbear「生む」・「熊」のように見た目や発音が同じ単語でも語源が全く異なるケースもあり、同じスペルと同じ音の単語の全てが同じ「核」を共有しているわけでは必ずしもないため、そうした部分への配慮も必要になります。

 

全ての単語や多義語について「核」や語源を用いるのではなく、あくまでそれを用いた方が覚えやすいと思われるものを、指導者であるあなたが取捨選択をして生徒に与えてあげてください

 

そして生徒自身にも、「全ての単語を「核」や語源で覚える必要はないが、便利な時もある」程度の認識に留めておいた方が良いことを伝えてください

 

「核」や語源の利用をやたらと強調した書籍やメソッドがよく見受けられますが、全ての単語をそのようなやり方で覚えていこうとするのはあまりにも危険であり、必ずしも実利的ではありません。

 

まずはあなた自身が普段から「核」を意識して単語を見つめる癖をつけ、しっかりと知識を蓄えておきつつも、教えるべきものとそうでないものを取捨選択する判断力も大切になることを心得ておいてください

 

「核」を用いた多義語学習は推測ゲームやパズル的な要素があり、豆知識としても面白いので生徒たちは案外興味深そうに話を聞いてくれたり、考えてくれたりします。
そうした要素もまた取捨選択の判断材料として活用してください。

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