英語ボキャビルの思い込みや誤解を解く技術1(土屋 雅稔 著)

英語ボキャビルの思い込みや誤解を解く技術1(土屋 雅稔 著)

英検1級レベルの単語は、ネイティブも知らない難しい単語?

 

英検1級に合格したいと思っている英語教師は多いでしょう。しかし、1級レベルの単語は難しくて、難攻不落の壁のように感じている人も多いと思います。

 

また、英検一級レベルの単語は、「ネイティブも知らないような難しい単語だ」というイメージをもっている人が多いようです。そして、「そんな難しい単語は、覚えても無駄だ」と感じて、学習意欲がわかない人も多いようです。

 

このようなときは、よく調べないままイメージで語るのではなく、実際にどうなっているのか、事実を調べてしまうのが建設的でしょう。

 

上記のような考えから、『英検でる順パス単 一級』(旺文社)の3訂版と4訂版に掲載されている単語が、実際にどのくらいの頻度で使われているかを調べて、拙著『<具体的・効率的>英語学習最強プログラム』(べレ出版)でお伝えしたことがあります。

 

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たとえば、L.M.モンゴメリの『赤毛のアン』(Anne of Green Gables)の冒頭の一段落では、『英検でる順パス単 一級』(旺文社)の3訂版と4訂版に掲載されている以下の単語が使われています(以下同様)
fringe, repute, intricate, decency, decorum, ferret

 

O.ヘンリーの『賢者の贈りもの』(The Gift of the Magi)の冒頭の一段落
imputation, parsimony, imply

 

ヘレン・ケラーの『私の生涯』(The Story of My Life)の冒頭の一段落
poignancy, tedious

 

デール・カーネギーの『道は開ける』(How to Stop Worrying and Stat Living)の冒頭の一段落
infest, scatter

 

J.K.ローリングの『ハリー・ポッターと賢者の石』(Harry Potter and the Philosopher’s Stone)の最初の4ページ
shudder, tantrum, blink, huddle, clutch

 

村上春樹の『海辺のカフカ』(Kafka on the Shore)Philip Gabriel訳の最初の4ページ
sluggish, smirk, interrogation, scatter, ominous

 

ジョン・グリシャムの『無実』(The Innocent Man)の最初の4ページ
churn, corrode, smirk, cramp, faculty, obituary, stigma, affiliation, notorious, ordinance periphery

 

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英検1級レベルの単語は、「ネイティブも知らないような難しい単語」ではなく、普通に使われている単語であることがわかりますね。

 

実際に使われているのを目の当たりにすれば、覚える意欲もわいてくるでしょう。英検1級レベルまでの単語は、無駄になるものはありませんから、安心して覚えていきましょう。

 

もし単語集などで難しい単語に出会って、「こんな難しい単語が本当に使われているの?」と疑問に感じることがあったら、google でヒット件数を調べてみるのも良いでしょう。

 

以下は、『英検でる順パス単 一級』(旺文社)の4訂版の索引に掲載されている最初の5つの単語ですが、google でヒット件数を調べたら、以下のようになっていました。

 

abate
約 27,800,000 件

 

abdicate
約 2,270,000 件

 

aberration
約 11,200,000 件

 

abhorrent
約 6,400,000 件

 

abject
約 6,900,000 件

 

ablaze
約 12,600,000 件

 

数が大きすぎて、ちょっと実感するのが難しいですが、大きな数だというのはわかります。英検1級レベルの単語がネイティブも使わないような難しい単語ではない、ということは明らかですね。

 

ためしに、abate と同じ意味の日本語の「和らぐ」を検索すると、約 2,450,000 件ヒットしました。

 

”abate” のヒット数は約 27,800,000件ですから、日本語の「和らぐ」の10倍くらい多く使われる語ということになります。

 

ちなみに文部科学省のデータによると、
http://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo3/015/siryo/05120501/s003.pdf
世界の母語人口は、日本語は1.25億人で、英語は4億人です。母語人口ではなく使用人口では、英語は5.14億人です。

 

おおざっぱに数えて、英語の話者は日本語の話者の4倍くらいだと仮定できます。そうすると、英語と日本語とで4対1ぐらいのヒット数の単語が、感覚的には、だいたい同じくらいの難易度の単語と考えられるかもしれません。

 

そうすると、英語の”aberration”の約 11,200,000 件や、”ablaze”の約 12,600,000 件が、日本語の「和らぐ」の約 2,450,000 件に対して、約4対1になりますから、同じくらいの難易度の単語と言えるかもしれませんね。

 

”aberration”や”ablaze”という英検1級レベルの語彙は、ネイティブも知らない難しい単語どころか、日本人にとっての「和らぐ」と同じくらい身近な単語ということになりますね。

 

難しい単語に出会って、「こんな難しい単語、ネイティブも知らないのでは?」と思ったら、google で検索してヒット数を調べてみると、良いでしょう。

 

当たり前のように使われている単語なんだと実感できれば、覚える意欲もわいてくるでしょう。

 

 

「5000語ぐらい覚えれば日常単語の95パーセント近くをカバーできるので、それ以上は覚えなくても大丈夫」ってホント?

 

単語集のキャッチコピーには、「この単語集を完全に覚えれば、日常生活で使う単語の95パーセント近くカバーできる」のようなものがあります。

 

とくに、易しめの単語集に、そのようなキャッチコピーが多いようです。

 

このコピーを見た人の多くは、「95パーセント近くをカバーしているということは、ほとんどの単語を知っているという感覚だろう」と想像するのではないでしょうか。

 

天気予報で降水確率が90パーセントを超えていれば、ほとんど雨だろうという感覚でしょうし、試験の合格確率が90パーセントを超えていれば、ほぼ間違いなく合格するだろうというのが、一般的な感覚でしょうから。

 

しかし95パーセントをカバーしているということは、5パーセントをカバーしていないということになります。

 

この数字は、英文に関しては、「知らない単語が多くて読む気がしない」という感覚が近いと思われます。次の文を見てください。

 

I have studied English for more than 10 years, but I am not good at English. It is very sad.

 

これは20語でできています。20語の5パーセントは1語ですから、こんな短い文に不明な単語が一つあることになります。

 

仮に次のように一か所、伏せ字になっている文があったとします。

 

I have XXXXX English for more than 10 years, but I am not good at English. It is very sad.

 

とてもではありませんが、この英文を理解できた気にはなりませんよね?

 

このような割合で知らない単語が出てくるとしたら、この後に文章が続いていたとしても、とても読む気はしませんね。

 

「この単語集を完全に覚えれば、日常生活で使う単語の95パーセントをカバーできる」というキャッチコピーからは、「95パーセントをカバーしているから十分だ」という印象を受けるかもしれませんが、「5パーセントをカバーしていない→全然十分ではない」というのが実際の感覚なのです。

 

耳に心地よい宣伝文句やキャッチフレーズには、注意しましょう。

 

 

 

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