なぜ英語学習において音読をするのか?

なぜ英語学習において音読をするのか?

なぜ音読をするのか?

 

 

英語教育の場で誰もが疑わない音読の重要性については、今さら語るまでもないことなのかもしれません。

 

「音読をしよう」、「音読は大切だ」という声は学校や予備校でも盛んに聞こえてきますし、授業で音読活動を取り入れることも今では当たり前のことになってきました。

 

ただ、「音読は大切」という認識を持ってはいても、なぜ大切なのか、ということをきちんと考えて指導している指導者は意外と少ないのではないでしょうか?

 

そして「音読の価値」がうまく伝えられないことで、「音読って本当に意味があるの?」と生徒に思わせてしまっている場合もあるのではないでしょうか?

 

 

ネイティブスピーカーの無意識の音読

 

一般的な認識では、自分の母語ではない言語を習得するための訓練として音読は有効であるととらえられています。

 

だから日本の英語教育現場では英語、つまり私たち日本人の母語ではない言語の技能を向上させるための手段として音読活動を取り入れています。

 

ではなぜ母語以外の言語の習得のために音読は有効と言えるのでしょうか?

 

私はこの理由について、そもそも母語話者がその言語を習得する過程で実は音読を行っており、それが結果的に母語習得に大きな役割を果たしてきたという根拠に基づいているからであると考えています。

 

 

母語話者が音読を行ってきた、と聞いて「いやいやそんなことはないだろう」、「生まれてから今日まで日本に暮らしてきたのだから、その中で自然に身についてきたではないか」「自分の母語をわざわざ音読した覚えなどない」と思われる方もいらっしゃると思います。

 

本当にそうでしょうか?

 

私がここで気が付いたのは、外国語習得のために必要な練習と心得て「意識的に繰り返し読むこと」を音読と呼ぶ一方、私たちは日本語を身に付けてきた過程において、母語だから自然と身に付くであろうという前提のもとに「音読しなければならない」という意識を置き去りにされた、いわば「無意識に繰り返し読むこと」という意味での音読を行ってきた、ということです。

 

たとえば、次のような発言をみてください。

 

「お腹減った」「次の授業って何だっけ?」「お母さん、今日の晩御飯は何?」「おつかれさまです」「今晩飲みに行きませんか?」「また誘ってください」・・・

 

こうした発言をただの一度も口に出したことがないという方は恐らくいらっしゃらないでしょう。

 

日常的に溢れるこれらの発言は、日々の生活の中で私たちは何度も何度も繰り返し言ったり聞いたりしています。

 

空腹であることを伝えたいとき、わざわざ「えっと、空腹を伝えるためには「お腹減った」と言えばいいんだ」と考えて、じゃあ「お腹減った」の一言を自然に言えるようになるまで音読練習して身に付けよう、などと意識的に訓練した人はいないと思います。

 

空腹であるとき、どのようにこれを発言するかなど考えるまでもなく、ほとんど反射的に「お腹減った」と発話することができるのは、日常的に意図せず行われる「無意識の繰り返し」によって完全に身に付いているからです。

 

 

上記のような簡単で日常的に溢れている発話に限らず、私たちは日々の生活の中で様々な日本語を喋ったり聞いたり、あるいは目にしたりします。

 

複雑な構造を伴う日本語にも、より高度な語彙を含む文章にも、何度も何度も繰り返し触れてきました。

 

だから、その繰り返しによって得たある種の慣れに基づいて、日本語を話したり書いたり、実践的に使用したりすることができるのです。

 

 

英語を母語とする話者についても、その他の言語を母語とする話者についても同じでしょう。

 

繰り返しの訓練の無い言語習得などあり得ないということを、ネイティブスピーカー自身が教えてくれているのです。

 

 

ただ、ある言語を身に付けようとする非ネイティブスピーカーは、母語話者が自然に音読をしてきたような環境には基本的には置かれていませんし、たとえ留学するなどして環境を整えたとしても、後天的に他言語を身に付けようとする場合には意図的に知識を身に付けること(学習的要素)も必要ですから、ネイティブスピーカーに比べると難しい状況で言語を身に付けなければならないことになります。
(別項「留学=英語力の向上か?」をご参照ください。)

 

だからこそ、音読活動は自然発生的に起こることを期待するのではなく、知識の学習なども踏まえた上で意図的に行う意識的な訓練としての位置づけで行われなければならないものであり、このことを指導者がしっかりと理解し、生徒にも理解させることが極めて重要です。

 

 

「価値」が見えてはじめて手を出そうと思える

 

英語教育における音読の重要性とその価値は、上記のような背景に基づいて語ることができると私は考えています。

 

思い返してみると、私自身もまた、アメリカ留学時代には現地の英語話者が発言している文章を覚えては真似をして、機会を見つけては何度も同じ発言を繰り返すよう意識的に努め、やがて英語が自然に口をついて出てくるようになりました。

 

「学ぶは真似る」とはよく言ったものだなと思ったものです。

 

その意味では、発話を含めたアウトプットとしての英作文は、実のところ「英借文」とも言うことができます。

 

豊富な音読経験によって自分の中に取り入れた英文を一種の借り物としてストックしておいて、それを基に自分なりに表現したいことに応じて語彙を変えたりアレンジを加えたりしてアウトプット力を高めていくことができるのです。

 

 

ただ、「音読は大事」と言われた生徒たちの中には、「音読をすればどのような効果があるのか」「本当に音読に意味はあるのか」「音読をしている暇があれば一問でも多く問題を解いたり参考書を読んだりしていた方がいいのではないか」と考えるものも少なくありません。

 

参考書が与えてくれるような知識でもなければ辞書に載っている情報を与えてくれるわけでもない音読は、多くの生徒たちにとって、いわば掴みどころのない抽象的な概念のようなものでしかなく、その「価値」を見出しにくいものなのです。

 

価値の見えない商品には誰も手を出しません。

 

それと同じような認識になってしまうことが少なくないのです。

 

 

だから私たち指導者には「音読をすることの価値」をしっかりと提示することがまずは求められます。

 

音読の価値を提示されることではじめて生徒たちは「だったら音読をやってみようか」という気になるのです。

 

そのために、上記のような考え方や、あるいはあなた自身の音読体験などをしっかりと語って聞かせることができるように準備をしておいてください。

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