英語学習で何を音読するか?(中学・高校)

英語学習で何を音読するか?(中学・高校)

何を音読するか?(中学・高校)

 

音読が重要であることの理由はこれまでに語ってきた通りです。(「なぜ音読をするのか?」「音読の効果を得るために必要な3つのポイント」

 

では、具体的には何を音読すれば良いのでしょうか?

 

 

教科書を使って基礎の定着を

 

まず中学生に音読をさせる素材としては、普段の授業で使っている教科書が妥当です。

 

その理由の一つは、ターゲットと内容の分かり易さです。

 

基礎基本を定着させることが大きな課題となる中学校では、学習のターゲットとなる基本文法がレッスン毎に明確に分けられている教科書が最も価値があります。

 

テーマも特に1年生の間は身近なことがらが中心となっており、難しいことを考えなくていいという意味で負担が軽く済みます。

 

2年生や3年生になると(もちろん教科書によりますが傾向としては)他の国の文化や偉人の伝記的読み物、環境問題、さらには貧困や紛争問題などの社会的なことがらをテーマとした内容も登場しますが、高校の教科書や問題集に比べるとはるかに平易に説明されており分かりやすく、広く物事を考えるきっかけを与えるという意味でもとても良い内容となっています。

 

ターゲットとして明確な文法と分かりやすい内容。これらを、音読を通じて定着させることは十分に可能であり、価値があります。

 

もちろん、ときには教科書を離れて投げ込み的に別の文章を取り入れることも有効です。

 

教科書ばかりだと飽きてしまうこともありますし、生徒たちが日ごろから興味を持っているテーマの文章をどこかから引っ張り出してくることも必要です。

 

ただしその場合には、教科書と同様に、定着を図るべきターゲットとなる文法が織り交ぜられた文章であること、そして読みやすく分かりやすい内容のものであることにしっかりと気を配ってください。

 

場合によっては、原稿をリライトしてでも生徒にとって有益な文章を用意するようにしてください。

 

中学生に教科書を音読させることが良い理由のもう一つは、文章が短いということです。

 

1パート毎の文章量は片側1ページに収まる程度で、数十秒から長くても1分程度もあれば読み終わることができます。

 

あまりにも長いものは「いつになったら終わるのか」「まだ読まなければならないのか」という印象を与えてしまい、疲れを誘いやる気をくじけさせてしまうことがあります。

 

あっという間に読み終わる程度の長さだからこそ、ちょっとしたゲーム的要素も取り入れながら(詳しくは別に書きます)、楽しく何度も繰り返し音読活動をさせることができます。

 

 

高校も基本は中学と同じ。でも、やり方は工夫が必要

 

次に、高校生の音読に使う教材についてです。

 

1年生と2年生の間は、基本的には中学と同じで教科書です。

 

1、2年生の教科書は、(これも教科書によるかもしれませんが基本的には)レッスン毎にターゲットとなる文法や押さえるべき語法などが明示されており、それらの定着を図ることが優先されるため有効です。

 

(高校の授業では、大学入試問題の過去問や入試対策長文などを扱うこともありますが、それらは学習の集大成的なものであり、文法ターゲットも絞られておらず、煩雑になりがちです。)

 

ただ、高校の教科書は中学のものと比べると文量が格段に増えるわりにターゲット文が1つか2つ程度しか出てこなかったり、それ以外の細かい動詞の語法やイディオムなども多数登場したりするため、入試問題ほどではないにせよ、音読の教材としては扱いづらくなることがあります。

 

「理解」を前提として音読活動に移行するに際して、1レッスンはおろか1パートの中でさえ教えるべき要素や覚えさせたいことがらが多すぎるケースがあるのです。

 

かと言ってそれらを無視するわけにはいきませんから、非常に悩みどころとなってしまいます。

 

もちろん、繰り返しの音読によって多くのことがらが身に付くことは大いに期待できますが、その前段階に必要な「理解」のための解説や活動に手間がかかり過ぎたり、難しくて生徒もやる気をなくしてしまったりすることが危惧されます。

 

また、1レッスンあたり300語から場合によっては600語ほどもある教科書の長文を全て音読するなど授業の中では時間的に難しいですし、そんなに長いものを全て音読する気持ちなどふつうは起こりません。

 

そういうときは、思い切って「1段落目だけ」とか、「3段落目だけ」、のように、一気に全てを事細かく見るのではなく、指導者が特に重要であると考える箇所に解説と音読の範囲を絞り、その中で何が大切なのかということを明示して定着を促すというやり方もいいでしょう。

 

時間はかかっても、特に低学年のうちは、今日は「1段落目だけ。明日は2と3段落目」のように小分けにして、「理解」「音読」「理解」「音読」のように交互に進めても構いません。

 

ただし長文読解においては、最終的には文章全体を通じた流れや筆者の意図を読み取ることがとても重要ですから、小分けの進め方をしつつも、最後にはしっかりと全体を見渡した理解と定着で締めくくることができるように心がけてください

 

生徒のレベルと集中力が高く進度を速めても良さそうな場合には一気に解説をしてしまって、音読箇所だけを絞るというのも良いでしょう。

 

 

なお、どのような生徒が相手でも、一度に行う音読の量は100語から200語程度が良いと思います。
どれだけ欲張っても300語程度以内には収めてください。それ以上は時間も気持ちも続きません。(300語でも相当厳しいとは思いますが。)

 

それが終われば、さらに読んだ内容のまとめを英作させたりパラフレーズさせてみたり、ターゲットの文法や身に付いたイディオムを用いた会話活動で感想を述べさせたり、より使える英語に向けた活動をどんどん取り入れてください。

 

そして授業で行った音読箇所はもちろん、扱えなかった箇所についても、音読は教室外で時間を見つけて行うよう、別項で述べた価値と合わせて促すことを忘れないでください。

 

状況によっては音読記録シートを配布して宿題にしてでも行わせるようにするべきだと私は考えます。
(それでも本当に音読をしたかどうかは本人以外には分かりませんが、それくらい重要なことだと印象付けることが大切です。)

 

 

高校3年生では、教科書よりも大学入試過去問や対策問題集を使って授業をすることが増えると思います。

 

入試問題や対策問題集には1、2年生での学習内容がふんだんに盛り込まれていますから、いよいよ高校での英語学習の集大成に向けてこれらの問題集などを音読させると良いです。

 

(これについても、授業内ではやはり100~200語程度に小分けにした音読が有効です。ここまで継続してきたやる気のある生徒は500語でも600語でも、家で勝手にやりますから心配いりません。その意味では、1、2年次からそこまでやるように指導者が促すことに成功するかどうかが問題です。)

 

音読を通じて大学入試レベルの文章に慣れておくこと自体が受験対策となることも一つのメリットであると言えると思います。

 

 

大学生以上の学生や社会人の方々が活用するべき音読の素材についてはまた別の記事で扱いたいと思います。

 

 

 

最後に

 

高校3年間の指導を終え、彼らが受験を終えた後、私は「英語学習に成功した」と言える生徒たちに次の質問をします。

 

「これまでの英語の学習で、何が自分にとって一番役に立ったと思う?」

 

すると90%以上の生徒たちから「音読です」と答えが返ってきます。

 

1年生のときから先生に言われたように家でも信じて音読を続けてやってきたことが、今の力に繋がったのだと。

 

この事実もまた、音読の価値として語り聞かせてあげられるのではないでしょうか。

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