英語は日本語の都合など知ったことではない3(語順の原理)

英語は日本語の都合など知ったことではない③(語順の原理)

英語は日本語の都合など知ったことではない③(語順の原理)

 

日本語訳に頼らず、英語を英語として受け入れることの重要性と、それを体現するための音読の基本的な練習について述べてきました。

 

いまだに多くの英語指導者が勘違いしていることがありますので、ぜひ覚えておいてください。

 

英語学習において、日本語訳ができるようになることは目的ではありません

 

言語の4技能は「読む」「書く」「聞く」「話す」ですが、どこにも「和訳する」などありません。

 

英文を日本語訳することではなく、英文の構造と意味を語順通りに追いかけながら理解できるようになることが大切なのです。

 

その理解が確かなものだということを確認するために、最終的に自然な日本語訳ができるようになればいいだけのことなのです。

 

「英文→和訳」ではなく、「英文→語順通りの理解→確認のための和訳」というプロセスを徹底的に訓練すれば、英語の語順構造や文法の「なぜ?」が分かるようになったり、話し手の呼吸と息づかいが聞こえてきたり、英語の感性を味わったりすることにつながるのです。

 

 

語順通りの理解における重要な原理

 

語順通りに英語を理解する上で、知っておきたいとても大切な原理があります。

 

それは、英語の語順は、「話し手(書き手)の情報発信」と「聞き手(読み手)の疑問」が暗黙のうちに繰り返されることによって成り立つ、ということです。

 

前項で扱ったTom knows that Mr. Jones is a teacher who teaches English at ABC high school.を例に挙げると、次のようになります。

 

Tomトムがどうした?knows何を知ってる?that Mr. Jonesジョーンズ氏がどうした?is a teacherどんな先生?who teaches何を教える?Englishどこで?at ABC high school.

 

という具合です。

 

そしてここで気づきたいのは、「聞き手(読み手)の疑問」は、先行する発話と意味や性質的に強く結び付く内容を問うことになっている、ということです。

 

たとえばwho teaches English at ABC high schoolの部分を挙げてみると、who teaches「誰かと言うと教える人なんだ」ときて、その次に「何を?」と聞くのか、それとも「どこで?」と聞くのかの判断は、直前の単語との結びつきの強い方を選ぶことが前提となっています。

 

「教える」とより結び付きが強いのは「場所」ではなく「教える中身そのもの」ですね。ですから「何を?」と聞き手は疑問を投げかけ、それに答えるようにEnglishが発話され、いったんteaches Englishをひとまとめとして話し手も聞き手も納得してから、意味的な結びつきの弱い「場所」を補足的に「どこで?」と問い、その答えとなるat ABC high schoolが後に従うことになります。

 

もちろん話し手は一方的に話しているわけですから、実際に疑問と答えのやり取りが二人の間で交わされているわけではありません。

 

しかし両者の間ではそのような情報のやりとりが暗黙のうちに、ほとんど無意識のレベルで行われているのです。(英語の文構造を体得しているからこその無意識レベルですね。)

 

その証拠に、もしも話し手がwho teachesで言葉を止めてしまったら、聞き手はまず間違いなくHe teaches what?、What does he teach?などと声を出して尋ねてくるでしょう。

 

聞き手(読み手)は常に情報を得たがっているのです。

 

 

最終的に出来上がった英文の語順を眺めると、意味の結びつきが強い単語は互いに近くに置かれ、そうでない単語は互いに遠くに置かれていることがよく分かります。
(ちなみに、ある動詞(ここではteaches)に対して結びつきが強いということは、その動作の対象として意味的に直接結びついているということであり、これを文法用語で直接目的語と呼ぶわけです。)

 

 

これが英語の語順構造の基本的原理であり、この発想を理解しておくことは非常に重要です。

 

これを知っておけば、音読の際にもしっかりと単語同士の意味の結びつきをイメージすることで英語の感覚を磨く手助けとなりますし、自分が英作文をするときも、意味の結びつかない単語同士を並べてしまうようなミスも軽減できることにつながります。

 

 

最後に補足ですが、大学入試問題などでも登場する、形容詞の語順問題も同様の発想で解決することができます。

 

たとえばchairs「椅子」を修飾するためにbrown「茶色の」、three「3つの」、wooden「木製の」の3つの形容詞が与えられ、これらを適切な順に並べ替える問題が出題されたとします。

 

「椅子」という物質と最も強く結び付く形容詞は椅子そのものの性質を表す「木製の」ですから、chairsの最も近い位置にwoodenが置かれることになります。

 

逆に最も結びつきが弱いのは椅子の性質でも見た目でもない「3つの」という単なる数を表すthreeですので、これが最も遠い位置に置かれます。

 

形容詞は修飾する名詞の前に通常は置かれますから、最終的にthree red wooden chairs「3つの赤い木製の椅子」の語順となります。
「数→見た目→そのものの性質→修飾される名詞」の順ですね。

 

上記のような語順の発想が持てれば、まさに英語らしい感覚で解くことができるのです

 

(修飾と言えば、特に分詞の単元で、句で名詞を形容する場合は後ろから修飾する(後置修飾)と教えますが、three、red、woodenなどの単独の形容詞が複数ある場合、それぞれは独立した形容詞であり、それぞれが個々に名詞chairsを修飾するため、これらの形容詞は句としてまとめられるのではなく語の扱いを受け通常通り名詞の前に置かれることになります。)

 

 

ところで、私は文法指導は心理の指導だとあらゆるところで述べておりますが、「結び付きの強いものは近くに、結び付きの弱いものは遠くに置いておきたい」という発想も単なる無味乾燥な文法ルールではなく、人の心理の表れということができますね。

 

「自分と強い結び付きのある愛する恋人は近くにいてほしい、結びつきのない赤の他人は遠くにいても構わない」そのような気持ちに通ずるところがあるように思います。

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