英語は日本語の都合など知ったことではない1(音読の約束事)

英語は日本語の都合など知ったことではない①(音読の約束事)

英語は日本語の都合など知ったことではない①(音読の約束事)

 

音読の価値を理解し、音読素材を用意し、環境も整え、いよいよ本格的な音読活動を始めるにあたり、その心構えとして大切なことを述べておきます。

 

それは、「英語をありのまま受け入れること」です。

 

英語という外国語を学ぶとき、日本語による説明や和訳などを頼りにその理解を求めることはよくあることです。

 

英語を学ぶからと言って、100%全て英語を用いて学ばなければならないということはなく、日本語を介在させた方がはるかに効率的に学ぶことができるものも多くあるからです。

 

 

しかし音読活動においては、英語を英語として身に付けるための訓練ですから、意識の中になるべく日本語を取り入れないことを目指すことが理想的です。

 

そのためには、英語の語順に従って意味を理解しながら正確な発音で伝えることを心掛けなければなりません。

 

日本語で英文を理解しようとするとき、「後ろから訳す」とか「後ろに名詞があるから他動詞だ」など、いわゆる「返り読み」がしばしば行われます。

 

 

当たり前のことですが、左から右へと流れる英文は、本来その語順に従ってしか声に出して読まれることはありません。
 
逆にリスニングにおいては、聞こえてくる順番でしか単語は耳には届きません。
 
どの言語も、前から後ろへと順に発話されてこそ文章としての意味が成立するということです。

 

 

ですから、たとえばJohn plays soccer.という文があるとき、「ジョンはサッカーをする」という日本語訳に基づいた音読をするのではなく、「ジョンは/する/サッカーを」という英語の語順に従った意味を追いかけながら音読をしなければならないことを一つの約束事としてください

 

 

言語体系があまりにも異なる日本語をここに介入させることは大きな障害となります。

 

英語と日本語は簡単に相互交換ができるほど単純なものではないからです。

 

ときには英語にはあるはずの単語が日本語訳をしたときには消滅し、あたかも存在しない単語であるかのように思えてしまう場合もあり、つまりそれくらい異なる言語だということです。

 

 

英語は、私たち日本語話者にとって、日本語話者なりに理解しやすいようにできている言語では決してなく、厳しい言い方をすれば、「英語にとっては日本語の都合など知ったことではない」のです。

 

ですからやはり、音読という実践的な訓練においては、日本語の都合は可能な限り排除するべきなのです。

 

 

以下に少し具体的な例を挙げてみます。

 

 

日本語では存在しないように振る舞うthat

 

「関係代名詞や接続詞のthatは文を接続するはたらきをしているだけだから意味はなくて、日本語にも訳さない」というふうに教えることがあります。

 

たとえばI know that she is a doctor.「私は彼女が医者だということを知っている」という文で、thatは「私は知っている」と「彼女は医者だ」をつなげる接続詞ですから「あれ・あの・それ」とは訳さない、という具合です。

 

確かに最終的にすっきりする日本語訳を考えると、thatは訳さない方が自然になります。

 

しかし実は、この見落とされがちなthatにこそ英語の感覚を磨くポイントがあるのです。

 

日本語には訳されないthatにもきちんと意味はあります。
文字として、あるいは発言として文中に現れている以上、意味がないわけがありません。

 

単語を辞書で引いたときに、「この単語に意味はありません」などと書かれているわけがありませんね。「意味はない」というのはあくまで日本語の都合に合わせているだけです。

 

訳したときに「あれ・あの・それ」が不要なのは日本語の都合であり、英語を語順通りに追って語順通りに意味を捉えるという当たり前のことを無視してしまっているのです。

 

正しくは「僕は知っているんだ。それって(その知っていることは何かと言うと)彼女がお医者さんだということなんだ」という具合に、自分が知っている内容をthatが指し示すという意味で「それって」といった解釈が本来はできるはずなのです。

 

そこを無視して機械的に接続詞に意味はない、訳さないといった暴力的な英語の読み方をしていると、いつまでたっても英文を正しく理解することも自分で使えるようになることもできません。

 

 

関係代名詞の例も見ておきましょう。

 

I bought a book which Murakami Haruki wrote.を日本語訳すると「私は村上春樹が書いた本を買った」という具合に、whichがあたかも存在しない語であるかのような日本語になります。

 

しかし先ほどのthat同様、きちんと意味はあります。

 

関係詞は疑問詞とは分類上別のものですが、疑問詞としてのwhichは「どれ・どちら」という意味をきちんと持ちますね。関係代名詞として用いられるwhichにもこの意味は生きています

 

つまり、「僕は買ったんだ、ある本をね。どの本かというと、村上春樹が書いた本なんだ」という具合に、「どの本かというと」の意味を接続的に乗せて聞き手に説明をもたらしているのです。

 

 

いずれの場合も、前から意味を拾い上げながら読むという当たり前の読み方をするとその意味がよく分かるということですね。

 

 

基本中の基本なのですが、こうした読み方は実際にはなかなかできていないことが多いものです。

 

きちんと前から読むトレーニングは英語を学び始めたその瞬間から積んでおくのが理想的ですが、今日までそれをあまり意識してこなかった、あるいはそんな読み方は誰も教えてくれなかったという人も多いかもしれません。

 

もしそうであれば、さっそく読み方を改めてみてください。
あるいは教え方を改めてみてください。

 

  • 和訳ありきで英文を考えず、日本語として順序はおかしくても、逆戻りせずにきちんと前から意味を拾うこと。

 

  • 接続詞や関係詞、冠詞など、和訳には現れない細かい単語もしっかり意識して意味を拾うこと。

 

これらを常に意識してください。
 
英語のリズムを身に付け、その呼吸と感性を体現するにはそれしかありません。

関連ページ

なぜ英語学習において音読をするのか?
英語学習において音読は欠かせません。ここでは、なぜ大切なのか、指導上の注意点は何なのか、について説明します。
英語学習における音読の効果を得るために必要な3つのポイント
英語学習において音読は欠かせません。ここでは、なぜ大切なのか、指導上の注意点は何なのか、について説明します。
英語学習で何を音読するか?(中学・高校)
英語学習において音読は欠かせません。ここでは、なぜ大切なのか、指導上の注意点は何なのか、について説明します。
英語学習で何を音読するか?~大学生・大学院生・社会人・英語教師
英語学習において音読は欠かせません。ここでは、なぜ大切なのか、指導上の注意点は何なのか、について説明します。
進度の速い英語授業vs.音読を取り入れた遅い授業
英語学習において音読は欠かせません。ここでは、なぜ大切なのか、指導上の注意点は何なのか、について説明します。
進度の速い英語授業vs.音読を取り入れた遅い授業
英語学習において音読は欠かせません。ここでは、なぜ大切なのか、指導上の注意点は何なのか、について説明します。
英語の音読訓練のための環境作り(前編)
英語学習において音読は欠かせません。ここでは、なぜ大切なのか、指導上の注意点は何なのか、について説明します。
英語の音読訓練のための環境作り(後編)
英語学習において音読は欠かせません。ここでは、なぜ大切なのか、指導上の注意点は何なのか、について説明します。
英語は日本語の都合など知ったことではない2(易しい文の音読から感覚を磨く)
英語学習において音読は欠かせません。ここでは、なぜ大切なのか、指導上の注意点は何なのか、について説明します。
英語は日本語の都合など知ったことではない3(語順の原理)
英語学習において音読は欠かせません。ここでは、なぜ大切なのか、指導上の注意点は何なのか、について説明します。
英語音読指導の手順1
英語学習において音読は欠かせません。ここでは、なぜ大切なのか、指導上の注意点は何なのか、について説明します。
英語音読指導の手順2
英語学習において音読は欠かせません。ここでは、なぜ大切なのか、指導上の注意点は何なのか、について説明します。
英語音読指導の手順3
英語学習において音読は欠かせません。ここでは、なぜ大切なのか、指導上の注意点は何なのか、について説明します。
英語音読指導の手順4
英語学習において音読は欠かせません。ここでは、なぜ大切なのか、指導上の注意点は何なのか、について説明します。
英語音読指導の手順5
英語学習において音読は欠かせません。ここでは、なぜ大切なのか、指導上の注意点は何なのか、について説明します。
英語音読の手順の補足とその他の方法論
英語学習において音読は欠かせません。ここでは、なぜ大切なのか、指導上の注意点は何なのか、について説明します。