Good morning.の本当の意味

Good morning. の本当の意味

Good morning.「おはよう」や、Good evening.「こんばんは」のように、Goodを用いた基本の挨拶表現を中学生に教えますが、これらはわざわざ教えなくてもいいくらい、私たち日本人にとってなじみ深い挨拶表現としてすっかり定着しています。

 

でも、直訳すると「良い朝」、「良い夜」であるはずのこうした表現が、どうして挨拶の言葉となるのでしょうか?

 

ここではGood morning.を取り上げ、その背景にある本当の意味に迫ってみたいと思います。

 

 

「おはよう」と訳せないGood morning.もあることを知る

 

イギリス初の女性首相マーガレット・サッチャーを描いた伝記映画『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』(2011年公開)の中で、とても興味深いシーンがあります。

 

サッチャーを中心とした午前中の会議の場で、機嫌を損ねた彼女が自分の言いたいことを散々言い倒した挙句、今日はもう会議を終了するという流れになります。

 

サッチャーの強烈な態度に面食らって静まり返る会議室。皆戸惑って誰も席を立とうとしません。

 

そこでサッチャーは一言、Good morning.と少し語気を強めて言い放ちます。

 

さて、このGood morning.を「おはよう」と訳してもいいでしょうか?

 

機嫌が悪くて会議はもうおしまい、という険悪な状況を自ら作っておきながら、いきなり「おはよう」ではわけがわかりませんね。

 

このように「おはよう」の日本語訳では全く通じないGood morning.の発言はあり得ます。

 

こうした状況の中にこそ、私たちにとって、英語の本質に迫るチャンスが転がっていると言えますから、そのことを心得ておいてください。

 

ではサッチャーのこのGood morning.はどのような意味なのでしょうか?

 

 

 

Good~.はお祈り

 

実は、Good morning.やGood evening.などの挨拶は祈願表現と言って、簡単に言えば相手に向けたお祈りです。

 

You may have a good morning / evening.またはI wish you a good morning / evening.
つまり「良い朝/夜になりますように」が原義です。

 

そしてこのYou may have aまたはI wish you aを省略したものが、Good morning / evening.です。

 

英語におけるGood~の挨拶には、相手への思いやりが込められていることを見て取ることができますね。

 

対して日本語における「おはよう」「こんにちは」「こんばんは」は、
「朝早くから」の早いが「おはよう」、

 

「今日は」つまり日中であることが「こんにちは」、

 

そして「今晩は」つまり夜であることが「こんばんは」にそれぞれ通じており、
これらはその言葉を発する「時間の事実」に由来した表現であることが分かります。

 

英語と日本語では「祈願の心理」と「時間の事実」という点で挨拶の意味的な成り立ちが根本的に異なっている、ということです。

 

しかし、だからと言ってGood morning.を「良い朝になりますように」などとは一般的な日本語の挨拶としては言いませんから、訳語については、どちらも挨拶であるということに重きを置き、日本語の挨拶として最も自然な「おはよう」「こんにちは」「こんばんは」という訳があてられているにすぎないわけです。

 

 

 挨拶の本当の意味から言葉の楽しさを感じてみる

 

さて、映画の話に戻りますが、サッチャーが会議を終わらせたにもかかわらず、誰も会議室から出て行こうとしないことにさらに苛立を覚えGood morning.と言い放った裏側には、

 

「もう会議は終わりですから、みなさんどうぞ良い朝をお過ごしください」

 

という意味が込められていることがこれでお分かりいただけるのではないでしょうか。

 

このシーンの字幕は、とにかく会議は終わりというニュアンスをくみ取って「以上です」となっていました。

 

 

このようにGood morning.=「おはようございます」と機械的に覚えているだけではこの面白さを味わうことは決してできません。

 

誰が聞いても明らかにはっきりとGood morning.と言っているのに、字幕は「以上です」となっている。

 

これは私たち日本人にとっては大きな違和感(ときに混乱の原因)でありながら、言葉の背景にある本質を理解することができれば、その面白さを理解することができる、そのためのきっかけとなるもの、と言えます。

 

そうした視点で言語と向き合いながら教える姿勢も、指導者には大切なことなのだと思います。

 

 

ちなみに「さようなら」はGood-bye.と教えますが、この原義がGod be with you.「神があなたと共にありますように(神のご加護があらんことを)」であり、この祈願文をまるごと短縮したものがGood-bye.であるというのはよく知られている話です。

 

ここにも、去り行く相手に向けたお祈りの気持ちを読み取ることができますね。

 

 

さらに蛇足ですが、「さようなら」にはFarewell.もあるではないかと思われたかもしれません。

 

実は偶然にも、Farewell.もGood-byeのように文章がまるごと短縮されて生まれた語です。

 

古くはFare thee well.という命令文の形を取っていました。

 

fareはgoと同じ意味(今でもfare「運賃」に通じています)で、theeは昔の英語におけるyou、そしてwellは「良く・元気で」という意味ですから、Fare thee well.はGo you well.、つまり「元気で行け」という意味を表していました。

 

このwellのあたりに、Good-bye.同様、やはり相手に向けた思いやりの気持ちを感じ取ることができますね。

 

 

これらの話は、授業でのちょっとした雑談や豆知識として披露することもできると思います。

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