海外インター校の実例から~言語能力を決める要素とは2
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言語能力は3つの要素のうち、最も低いところに収まる
*比較しやすいように、それぞれの学習時間と先天的な能力は「8」で一定にしてあります。
さて、言語能力を考える場合「成長段階による言語干渉」「費やした時間」「先天的な頭の良さ」の3つの要素を知ることが必要である、という話をしました。
それでは、この3つの要素がどのように働くかというと、 「3つの要素のうち、最も低い要素に言語能力は収まる。」 というのが私の持論です。
この中で「言語干渉」は、大人になるに従って克服できるようになってきます。その時に必要となるのが文法です。(図の中の黒枠の上積み部分) 言語の違いを理屈で理解できるようになるので、言語能力の伸びが期待できます。また、子どもと比較して意識的に長時間学習に取り組めるようになるので、これも有利に働きます。
反対に、日本語が母語としてかなりの割合で確立した7~9歳では、文法からのアプローチが難しすぎて期待出来ません。(図の中の赤枠の上積み部分)数年待って10歳になったころから文法から学んだ方が効果的でしょう。
5~6歳のグループで文法による英語力の向上が若干期待できるのは、文法の主要な部分は自然と身に着けていて、補足的な部分をやさしい言葉で文法を学べば、若干のレベルアップが期待できるからです。
日本人の子どもが海外インター校に入学して、日本語と英語の両方を伸ばしたい場合
日本人の子どもが海外インター校に入学して、ある程度のレベルのバイリンガルを目指す場合、年齢が鍵となります。 日本に住む日本人家庭で育った子どもが海外インター校に入学した場合の影響
4歳以下 |
5~6歳 |
7~9歳 |
10歳以上 |
|
---|---|---|---|---|
日本語 |
×
日本語学習を継続させることが困難 |
〇
日本語の維持と改善にはかなりの努力が必要ではあるが、十分可能 |
〇または◎
日本語学習は継続する必要あり |
◎ |
英語 |
◎
触れる時間が長いほど伸びる |
〇
能力&努力次第。一般的にはネイティブには及ばない |
×
文法からのアプローチが難しい時期 |
× |
年齢に関しては、2言語の両立が難しい時期が2つあります。
ひとつ目は、日本語の基礎が定着するおよそ4歳以前の場合は、かなり厳しいです。英語力の急伸と引き換えに、日本語力が頭打ちになるか低下していくことは、ほぼ避けられません。 日本語は彼らにとって、家庭での会話にだけ必要な言語、と認識されます。
「○○取って。」 「今日は○○食べようか。」 と言った簡単な内容にとどまることがほとんどです。 彼らに将来のために日本語を学習しなさい、と言っても無理な話です。親の期待と関係なく、生存に必要な言語を母語とするように、本能のセンサーが働きます。
7歳~9歳もまた、両立が難しい時期です。日本語がほぼ確立している一方で、英語を自然と身に着けられる能力はすでに失われつつあります。大人がするように、文法をテコにして学習しようとしても、年齢的に抽象概念が理解できないので、やはり2言語の両立は難しいと思います。
間に挟まれた5歳~6歳では両立が期待できます。 しかしながら、放っておいても大丈夫なわけではありません。子どもも親も、相当辛抱強く言語学習に向き合う必要があります。それでも最も成功率の高い時期であると言えるでしょう。
とは言っても、たいていの場合、ネイティブの能力に匹敵することは難しいと感じます。両親が英語で会話している環境ではないので、自然な言い回しは弱くなるのは当然です。目指すのは標準英語の習得でしょう。成長段階に応じて文法の勉強なども必要だと思います。
まとめ
これまでに述べた年齢は一般的な数字であり、個人差があるのであくまでも目安です。先天的な能力に関しては、幼少期に判断するのは非常に難しく、親であってもそれは変わりません。
ですから、こうした幼少期の海外での留学でポイントになるのは、成長段階における特徴を理解し、出来るだけ事前に自分の子どもの能力や性格を客観的に見つめ、環境の激変に耐えられるかどうかを見極めなければなりません。
一人っ子ならタイミングを計ることも難しくありませんが、3~4歳年齢が離れた兄弟の場合、どちらかに合わせるともう片方に困難が生じます。兄弟揃って平等にと思うかもしれませんが、無理は禁物です。
学校まかせにしないで、家庭でもこまめなケアが必要になってきます。小さな子どもに毎日我慢させながら勉強を強いるのは想像以上に大変なことです。特に子どもと接する時間が長い母親が辛抱強く指導できるかどうか、がカギになるでしょう。
日本に帰国するタイミングも大切だと思います。 日本の小学校の国語の教科書を見比べると分かるのですが、4年生から急に内容が抽象的な概念を取り扱うようになり、難しさが増します。家庭教育等でそれまでは何とか伸ばしてきたとしても、4年生以降の学習内容のすべてを海外で網羅するのは至難の業です。
スムーズに日本の学校で進学することを前提とするなら、小学校4年生の初めに合わせて帰国すると、子どもにかかる負担を最小にすることができるでしょう。
なかなかそうタイミングよく帰国できない事情はあるかもしれませんが、現実はそんな感じです。 小4以前でも、定期的に客観的に子どもの言語能力を査定して、帰国後に支障が残るような傾向が出てきたと判断したら、すぐに日本に帰国するくらいの行動力を持って欲しいと思います。
海外のインター校で学ぶということは、英語だけでなく、異なる背景を持った他の子どもたちとの交流を通じて、教養を高めていくということです。もしそれが成功して身に着けた場合は、一生ものの資産となる確率も高いのも確かです。
誰かの偏った意見に惑わされることなく、それぞれの家庭で正しい観点から議論を深めて、子どもの教育を考えることが大切だと思います。その時に「3つの要素」を思い出していただければと思います。
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