英語の婉曲で伝える「優しい」心理1

英語の婉曲で伝える「優しい」心理1

英語の婉曲で伝える「優しい」心理

 

誰かと言葉を交わすとき、あなたはどの程度自分の言葉の使い方に配慮していますか?

 

家族、友人、上司、部下、先生、生徒、店員、客・・・

 

様々な人間関係の営みにおいて、より良好な関係を保ったり、誰かを傷つけたり不快な気分にさせたりしないように、同じ意味内容のことを伝えるためでも私たちは日々様々な言葉や言い回しを選びながらコミュニケーション活動を行っています。

 

日本語であれ英語であれ、私たちは誰かと相対するとき、単に語彙やフレーズの表面的意味や文法の形式的な形のみに基づいて言語活動を行っているわけではありません。

 

立場があり、状況があり、そしてその時々における感情があり、ゆえにその都度必要な言葉を配慮の気持ちを持って選び取っているはずです。

 

 

たとえば、「英語の「過去形」を概念的に破壊することから仮定法の理解へ」というタイトルの記事の中で、過去形が「距離」を表すことについて触れ、過去形の表す相手との心理的距離感が、相手にプレッシャーを与えない適度な距離感となって丁寧表現につながることを説明しました。

 

これは良好な人間関係を保つために必要なコミュニケーション手段の典型的な例と言えます。

 

 

ちなみに、この過去形による丁寧表現は、英語だけでなく日本語にも見受けられるものです。

 

たとえばレストランで注文するとき、店員さんは確認のためにこんな一言を言うことがあります。

 

「ご注文は以上でよろしかったでしょうか?」

 

この「よろしかった」は過去形ですね。日本語の文法としての是非はさておき、少なくとも「よろしいでしょうか」よりもなるべく丁寧に相手と接しようとする気持ちが感じられます。

 

 

遠まわしな言い方が丁寧さに結びついたり、ストレートに相手に不快な思いをさせない配慮に繋がったりすることは、英語でも日本語でもよくあるということです

 

 

さて、このように互いの関係に配慮し、相手に不快感を与えないように遠まわしに言う表現を婉曲(えんきょく)表現と言います。

 

そして言語を用いる上では、その言葉の文法的な形とその意味さえ理解して使えるようになれば良いというわけではなく、互いの関係性にまで注意して言葉を選ぶことができてはじめて、より濃密で良好なコミュニケーションが成立するため、婉曲的な言葉の選び方に目を向けることが非常に重要となります。

 

 

ここでは私たちの身近にある婉曲表現(英語・日本語を問わず)を紹介し、その心理について触れることで、婉曲の大切さとこれを踏まえた指導の重要性を考えてみたいと思います。

 

 

toiletは「便所」

 

まずは誰もがストレートには言い出しにくい「トイレに行ってもいいですか」。

 

生きていれば言い出しにくいことの一つや二つは必ずあります。
トイレに行きたいことを伝えるこの発言もその一つでしょう。

 

ではこの内容を伝えるために、どのような言葉の選び方ができるでしょうか?

 

「便所!」なんて大胆な言い方から「お手洗いはどこですか?」という一般的な言い方、「ちょっと失礼」と用を足す空気感だけを紳士的に漂わせる言い方、さらに極端には「お花摘みに行ってきます」というメルヘンな表現まで、いろいろな言い回しができます。

 

「便所!」と言うのが最もストレートですが、こんな言い方は普通しませんね。
決して間違ってはいませんが、なんだか臭そうだし下品な印象を与えます。

 

そこで登場するのが婉曲表現です。

 

「便所」を「お手洗い」や「化粧室」に変えたり、「行きたい」を「どこですか」に変えたりするわけです。

 

「トイレ」を表す英語の婉曲表現としては、bathroom、rest room、WC (water closet)、washroomなどがあります。
なお、toiletが日本語で言うところの「便所」に最も近く、英語ではあまり好んでは使われません。

 

日本語ではカタカナの「トイレ」をあまり下品だと感じませんが、それは、「トイレ」自体が外来語、つまり文字通り遠いところからやってきた言葉だから婉曲的な響きを伴うためです。

 

 

身体的配慮

 

人間に対しては、身体的な配慮から婉曲表現を用いることが多くあります。

 

たとえば太っている人を「デブ」と呼ぶのは決して好ましくありません。
「ふくよか」とか「恰幅が良い」などと日本語では言い代えられることが多いですね。

 

英語でもHe is fat.とは言わずにHe is overweight.などと言います。

 

 

障がいを抱えている人については「障害者」ではなく「障がい者」と「害」の字をひらがなで表現するのも婉曲です。(彼らに害があるような印象を与えてしまうためにこの漢字の使用は避けられていますね。)

 

英語ではHe is crippled.の代わりにHe is physically challenged.のように言うことが多いです。

 

 

盲目の人には昔は「め〇ら」などという言葉がありましたが、今では差別用語になっています。

 

英語ではHe is blind.ではなくHe is visually impaired.と言います。

 

 

お年寄りのことも「老人」とは言わずに「お年寄り」とか「お年を召している」、「年配の方」などと言いますね。

 

英語ではHe is an old person.を避けてHe is a senior citizen.と言ったり、複数の場合はold peopleと言わずにthe elderlyと表現したりすることが多いです。

 

 

→英語の婉曲で伝える「優しい」心理2へと続く

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