to不定詞の指導の際、「toの後ろは原形だ」と言い切ってもよいか?

to不定詞の指導の際「to不定詞の後ろは原形だ」と言い切ってもよいか?

to不定詞の指導の際、「toの後ろは原形だ」と言い切ってもよいか?

 

英語の教員を目指しているある学生から、次のような質問を受けました。

 

「中学2年生に不定詞を教える際、toの後ろは原形だよ、と言い切ってもよいのでしょうか?」

 

 

確かに、中学2年生で初めて導入するto不定詞は、「to+動詞の原形」という形によって成り立つものであることをしっかりと定着させなければなりません。

 

しかし、toの後ろは原形が来る、と「言い切ること」については疑問です。

 

 

矛盾がバレるような指導はしてはいけない

 

どの単元でもそうですが、英語指導で大切なことは、いずれ矛盾がバレるような指導はしてはいけない、ということです。

 

特に中学での指導でありがちなのですが、分かりやすさを求めて簡潔に教えようとするあまりに、生徒が高校生になったときに「あれ、中学で習ったことと何か違う」と違和感を抱いてしまうケースは少なくありません。

 

例えば中学でmustとhave toは同じだと習ったのに高校では両者は違うと教えられるとか、couldはcanの過去形だと習ったのに「〜できた」の意味にならない、といったようなことです。

 

そのせいで英語に対する理解が妨げられたり、苦手意識や英語って難しいなという印象を生徒に抱かせてしまったりすることがあり、それだけは避けなければなりません。

 

(中学の指導者も高校の学習内容をしっかりと理解しておかなければならないと他項でも述べていますが、そこにはこうした理由もあるのです。)

 

 

to不定詞についても同じです。

 

toの後ろは原形だと言い切って教えてしまうと必ず矛盾が生まれます

 

そもそもI go to school.のtoの場合はどうなの?とか、I slept from 10 to 6.のtoはどうなの?とか、中学1年生ですでに目にしているような英文といきなり矛盾することになります。

 

また、一般的な教科書や参考書では、学習の順序としてto不定詞の直後に動名詞を扱うこととなっており、そこでlook forward to –ingやbe used to –ingなどが早速登場するため、高校生になるのを待つまでもなく矛盾だらけになってしまいます。

 

 

toは前置詞であり、名詞を従えるものであることと合わせて柔軟に指導する

 

基礎の定着を徹底的に図る上では、toと原形が結びつくことは強く印象付けなければなりません。

 

しかし、だからと言って「toときたら後は原形だ」と生徒に思い込ませてしまうのは極端なことであり、矛盾を生み出しますから、そこのバランスがとても大切です。

 

したがって、あくまで形式上の問題として、「toの後ろに動詞の原形を置いた形をto不定詞と呼ぶ」くらいに留めておいた方がよいでしょう。

 

 

中学2年生の指導では、十分な解説を行い、演習や音読等の訓練にしっかりと時間をかけ、to不定詞の基本用法を定着させることが最優先事項です。

 

その上で、toはあくまで名詞(相当語句)をしたがえる前置詞であり、よって動詞の原形以外に通常の名詞(数字も含む)、固有名詞、代名詞、動名詞も当然置くことができることも示しながら、

 

to不定詞は前置詞toを用いた使用の一つでしかないことを理解させることが理想的です。

 

 

「I go to school.のtoの後ろは普通の名詞(school)だね。」

 

動名詞の単元に入ってからは「look forward to –ingのtoの後ろはthe partyとかの普通の名詞を置くことができるね。だから動詞を普通の名詞の形にした動名詞が来るんだよ。」

 

などと説明しながら、toの後ろは必ず原形が置かれる、というわけではないことを理解させてください。

 

 

なお、名詞をしたがえるはずの前置詞toがなぜ動詞の原形を伴うことができるのか、ということについては別途「文型を教えた後、使役動詞や知覚動詞を用いた文章を文型的にどのように教えたら良いのでしょうか?」という記事の中で解説していますのでご参照ください

 

 

文法用語を正確に理解する指導者側の見識

 

最後に、「不定詞」という文法用語に関する誤解と矛盾について触れておきます。

 

以下のことは必ずしも生徒に説明する必要はありませんが、ぜひ知っておいてください。

 

上述の別記事「文型を教えた後、使役動詞や知覚動詞を用いた文章を文型的にどのように教えたら良いのでしょうか?」の中でも触れているのですが、「不定詞」という用語を誤解されている方はとても多くいらっしゃいます。

 

「不定詞」とは、人称や数などによってその形を定められることのない原形動詞のことを指します。

 

「to+動詞の原形」=「不定詞」ではないのです。

 

命令文における原形動詞、助動詞の後ろに続く原形動詞、補語Cにおける原形動詞、これらは全て不定詞です。

 

ですから「to+動詞の原形」は、本来は「to不定詞」とか「to付き不定詞」と呼ばなければなりません。
(私自身、生徒に「不定詞」について説明するときは、必ず「to不定詞」と言うようにしています。)

 

ところが、to不定詞を教えるはずの参考書の単元のタイトルがはじめから「不定詞」となっている点、さらに同単元における「原形不定詞」という用語にいたっては、to不定詞との区別のため、という意図的な意味が伴わなければもはや用語破綻すら起こしてしまっている点で、上記のような勘違いが引き起こされていると考えられます。

 

矛盾しない指導が大切とは言うものの、極端に言えば、参考書からしてすでに矛盾や解釈を間違えば不自然とも言える文法用語を伴ってしまっていることになるのです。

 

さらにこうした理解の不足から、「動詞の原形を伴うtoはその他の前置詞とは異なる特別なはたらきをするものだ」とか、「toを含めたまとまりを不定詞と呼ぶのだ」、などのように、前置詞toのはたらきまで勘違いされている指導者や学習者の方々は少なくありません。

 

だからと言ってそれが英語学習において何らかの支障をきたすかと言われれば必ずしもそうではないのですが、用語使用については正確さを貫きたいものではないでしょうか。

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