英語学習中、意外と見落とされがちな副詞的名詞

英語学習中、意外と見落とされがちな副詞的名詞

名詞なのに副詞のはたらきをするケース

 

塾でアルバイト講師をしているある大学生から、生徒からa little bit「ほんの少しだけ」という表現の使い方について質問を受けたのだが、即座にうまく答えられなかったという話を伺いました。

 

なるほどそれはなかなか痒いところを突かれたなと思ったのですが、確かに言われてみればa little bitのような表現について厳密に指導することは一般的にはあまりないのかもしれないと思い至り、ここで扱うこととしました。

 

 

a little bitという表現自体は、a littleに比べるとどちらかと言えば口語的な響きがあり、形式ばった文書や論説文などの書き言葉ではあまり見かけることはありません。
だから余計に見落とされているのだと考えられますが、少し細かく分析してみましょう。

 

bitは動詞bite「噛む」から派生した名詞で、「一噛み・一かじり」といった意味から「小さなもの・小片」などを表します。(コンピュータ用語の「ビット」もここから来ています。)

 

これを「小さい」を意味するlittleが修飾し、不定冠詞のaと共にa little bitで「あるほんの小さなもの」という名詞句を形成しています。
(そもそも小さいものであるbitをlittleが修飾することでなおさら小さいものというニュアンスが生まれます。)

 

形としての扱いは名詞句ですから、その品詞的機能を優先した使い方としてはとりわけ前置詞ofを従えて
I only had a little bit of a vacation.「私は休みのほんの少ししか持てなかった(直訳)」
のように使います。

 

(補足ですが、意味解釈上は「私はほんの少しの休みしか取れなかった」ということであり、その観点からa little bit of~を「ほんの少しの~」とすることで形容詞句的な扱いとして認識することもできます。
これはa lot of~やa number of~などと同じ考え方で、生徒に覚えさせるときにはそのように教えると良いです。)

 

 

一方、形として名詞句を形成しているa little bitは、次のような形で文中に現れることも多くあります。

 

I was a little bit angry last night.「私は昨夜はほんの少しだけ怒っていた」

 

意味から見て分かる通り、a little bitが形容詞angryを修飾する副詞として機能しています。

 

bitを伴わないa littleも同じで、
I was a little angry last night.「私は昨夜は少し怒っていた」
のように言うこともできます。

 

このときのlittleは形容詞ではなく名詞「小さなもの」として機能していますが、a littleで名詞句を形成しているという点ではa little bitと同じです。

 

 

このように、明らかな名詞の構造を持ちながら、文中では意味的に副詞のはたらきをしているものを副詞的名詞と呼びます

 

 

実は馴染み深い副詞的名詞

 

英語教育の現場においては、名詞、動詞、形容詞、副詞などのはっきりとした品詞とは異なり、副詞的名詞という曖昧な用語自体はあまり取り上げられることはありません。
(取り上げる意味もあまりありません。)

 

しかし、中学の学習段階で提示される、誰もが一度は見たことのあるような基本的な英文の中に、すでに副詞的名詞は多数存在しています。

 

I am thirteen years old.「私は13歳です」

 

このthirteen yearsはyearsが複数形であることから分かるように、明らかに名詞句です。
しかし意味としては、形容詞oldを修飾する副詞としてはたらいています。

 

I am going to visit my uncle next week.「私は来週おじを訪ねるつもりです」

 

このnext weekはweekが形容詞nextによって修飾されていることから分かるように、やはり明らかに名詞句です。
しかし意味としては、述語動詞部am going to visitを修飾する副詞としてはたらいています。

 

このように副詞的名詞は実のところ非常に身近なものなのです。

 

ただ、当然のごとく受け入れてきたthirteen yearsやnext weekなどの名詞が、実はこのような副詞的な性質を持った、ある種の特異な品詞のように機能するものだとは誰も教えません。

 

そんなことをわざわざ説明しなくても意味の理解において問題とならないからです。

 

そして何よりも、これくらい分かりやすいものであれば、きちんと文章として使えるようになることの方がはるかに優先すべき重要課題だからです。

 

だからこそ学習効率上の負担の軽減と利益を追求してa littleを「少しだけ~」とかa lot of~を「多くの~」のように文法構造を無視して覚えさせるのであり、その方が良いと言えることもあるのです。

 

しかしa little bitに疑問を抱くような生徒もいるわけで、中には「thirteen yearsは名詞ですよね?どうしてoldにかかるんですか?」などと訊いてくる生徒も実際のところいないではありません(私もそうした生徒を指導した経験が何度もあります)から、やはり生徒の知的好奇心に応えるためにも指導者側の理解としては大切です。
もちろん、きちんと使えるようになることの方が大事なのだとしっかりと生徒には伝えてください。

 

 

あまり知られていない、こんなに使える副詞that

 

副詞的名詞は多くの文脈で見受けられますが、このような意外な品詞としての使い方と言えば、実際の英会話などでとても頻繁に使われる、言わば本格的な生きた英語としての副詞thatが存在することを心得ている人はあまりいないのではないでしょうか。

 

副詞that自体は文中に聞いたことはあっても、それが副詞として機能しているものだと意識したことはないという方は多いことと思います。

 

通常thatは名詞、代名詞、形容詞、接続詞のはたらきをするものと教えますし、教科書や入試問題などでも副詞としてはたらくthatはまず登場しないと言っても過言ではありません。

 

しかし実際には副詞thatは驚くほど用いられるものです。

 

“Mom, I’m hungry. Can you cook something for me?”
「母さん、お腹すいたんだけど。何か作ってもらえない?」
“All right.”
「わかったわ」
と言って例えば母親が鍋から溢れそうなほど大量のパスタを茹でたとします。それを見て、
“Well, I’m not that hungry.”
「いやいや、そこまでお腹へってないよ」

 

このときのthatは形容詞hungryを修飾して「そこまで」とか「そんなにも」を表す副詞として機能しています。

 

他にも、
“Sick! This tastes terrible!”
「げえ!これ不味い!」
と友人が言ったものを試しに自分も口にして、
“It’s not that bad.”
「そんなに不味くないよ」
のように言ったりもします。

 

thatだけでなく、例えば何かの大きさを説明するときに、手元でジェスチャーしながら
“It was like this big.”
「これくらいの大きさだったよ」
のようにthisを「これくらい」という意味の副詞として使うこともできます。

 

 

副詞のthatやthisは、このように会話においては頻繁に現れるのです。

 

このことを知っておくと、学校では教えることのない、しかし実際には重要な生きた英語の使い方として指導することもできますね。

 

 

(最後のthatを副詞的「名詞」とするかはさておき)見落とされがちな副詞的名詞について触れてきましたが、よくよく考えたり調べたりしてみると、実に多様な文脈に生きていることが分かります。

 

ただ、その多くをそれとして教えることはありません。

 

しかしだからと言って、生徒に教えない知識は必要ないのではなく、必要なさそうなことがらを通じて、重要な発見と興味深い指導が実はできる可能性があるのではないかという認識で英語と向き合ってみてください

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