英語の現在完了形に関する生徒の疑問(実用編)

英語の現在完了形に関する生徒の疑問(実用編)

「①have been to~、②have visited~、③have gone to~の違いがわかりません。」

 

生徒から寄せられる現在完了形に関する質問のうち、特に多いもので、なおかつ実用的にも知っておきたいものをここでは取り上げます。

 

「①have been to~、②have visited~、③have gone to~の違いがわかりません。」

 

①と②は「~へ行った/訪れたことがある」という経験を意味し、

 

③は「もう行ってしまった(今はいない)」という完了を意味します。

 

 

③については「comeが「来る」ではく、「行く」がgoではないケースに学ぶ基本動詞の指導」という記事でも触れていますので詳しくはそちらをご参照いただきたいのですが、要するに、

 

goは「離れる」という意味を基本概念として抱えるためhave gone to~は「~へと離れていった」を意味し、したがって、「今の場所から遠ざかっていること」を表すため経験ではなく完了の用法としてしか用いえない、ということです。

 

 

では、どちらも経験を表すことのできる①と②は何が違うのでしょうか?

 

①I have been to China three times.「私は中国を三度訪れたことがある」

 

②I have visited China three times.「私は中国を三度訪れたことがある」

 

どちらも日本語訳的には同じで、一見すると違いが見受けられません。

 

ただ、実際にはニュアンスの明確な違いが存在しています。

 

それは、visitedの方がbeen toに比べてより明確な目的意識を感じさせる、ということです。

 

been toはbeが「存在」を表すため、どちらかと言えば「その場にいたことがある(行ったことがある)」という単純な事実であって、何のためにその場所に行ったのかはあまり問題になりません。たまたま立ち寄っただけの場合もあり得るわけです。

 

一方visitは、例えば仕事や観光などといった目的を達するために自らの意思で赴く、という意味がニュアンスに含まれます。

 

 

これにはvisitが他動詞であるという性質も関係していると考えられます。

 

他動詞とは、その行為による力が別の人や物事などに影響を与える動詞のことで、対象となる目的語に向かって積極的に力をはたらきかけている印象があります。

 

他動詞の直後には前置詞などを置かずにいきなり目的語が置かれる背景には、その積極性による動作と目的語の直接的な意味の密接さがうかがえます。

 

I am John.「私はジョンです」
これは「私はジョンという人物として存在している」という静的な事実であって、ジョンに及ぼす力は感じられません。

 

一方、I pushed the door open.「私はドアを押して開けた」
この文章では「ドア」という目的語に向かって「私」は明らかに力を加えています。他動詞pushの感じさせる積極的な力と、その力が直接及ぶ目的語the doorとの意味の密接さがうかがえます。

 

同時に、ドアを押し開ける以上は「その向こうに行きたい」とか、「誰かが通れるように開けてあげた」とか、何らかの目的意識までも感じさせます。

 

 

つまりvisitも同様に、「何らかの目的のためにある場所を訪れる」空気感を感じ取ることができるのです。

 

 

visitに目的意識が感じられる証拠に、逆説的ではありますが、been toの後ろには人間を置かないことが挙げられます。

 

I have been to my uncle.のようには言わないのです。

 

一般的に、誰か人物を訪ねる際には、何らかの目的を持って訪れるのがふつうだからです。

 

またbeen toの後ろに人物を置いた場合、「その人物のところに私は存在した」という、不自然な意味に聞こえてしまいます。

 

ですから、例えば連休に家族とのんびり過ごすなどの目的達成のためにI have visited my uncle.と言うのが自然であるということになるのです。

 

 

これらの違いを踏まえて、どの状況で①②③を使い分ければよいのかということをしっかりと理解し、実際に使ってみる練習を通じて身に着け(させ)ていってください

 

 

さらに念のため補足すると、別項でも解説したように、ただ「~へ行った/訪れたことがある」という表面的な意味だけではなく、「訪れたことによって今現在どうなっているのか」という「現在視点」と、「その視点から続く未来への歩み」の解釈を想像させることも忘れないでください

 

 

I have visited my uncle twice this week.

 

この文では、おじを訪れたことで筆者は現在どのような状況なのでしょう?
ひょっとしたら、おじの元気そうな顔を見て安心しているのかもしれません。
とりあえず今週は二度もおじを訪れたのだからもうしばらく会いに行かなくていいと思っているのかもしれません。
そして、そうした気持ちを抱えたまま「私」は今この瞬間に未来への一歩を踏み出しているのです。

 

文脈があれば文脈に応じて、文脈がなければ想像力を最大限活用して、文章の抱える意味と呼吸を大切にしてください

 

 

 

最後に、よく参考書などでも「○○=□□」のように、ある表現と別の表現が同じであるというような説明の仕方をされることがありますが、英語は形が違えば意味も違います

 

そのことを理解して、「〇〇と□□は本当に同じ意味だろうか」と疑問意識を抱き、様々な例文を比較し、あるいは自身の英語経験に基づいてその本当の意味や使い方を探る癖をつけてください

 

言語は生き物です。
どの表現や文法がどのような文脈でどのように呼吸しているのか。

 

言語の本質を追究する大切さと面白さを、あなた自身が感じられる指導者でいてください

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