「英語力の高さ」=「合格」や「高得点」ではないと心得る

「英語力の高さ」=「合格」や「高得点」ではないと心得る

高校入試や大学入試などで目標とされる「合格」という実績や、定期テストや模試などで求められる「高得点」という結果は、とりわけ学校現場(進学校)では教育の成果を測る指標として、非常に重要なものとして位置付けられています。

 

しかし、「合格」や「高得点」という尺度は、「英語力の高さ」を保証するのでしょうか?

 

「目標」と「目的」を混同してはいけない

 

大学受験指導であれ、英検やTOEIC等の資格対策指導であれ、生徒を「合格させること」や生徒の「点数を上げること」に気を取られるあまり、つい目先の得点力向上のための方法論や点数の稼ぎどころばかりを指導していないでしょうか?

 

それを「英語を教えたこと」だと思い込んでしまう英語教師は少なくありません。

 

もちろん、それはそれで大切なことです。

 

対策のために生徒たちは必死に単語を覚えたり、文法や読解問題に取り組んだりする中で確実に知識を高めていきます。また、生徒が合格したり得点が上がったりすることで、彼らが自信を持って次のステップに進むことができるようになることもあります。

 

しかし、あくまで指導する側の意識としては、

 

「合格」や「得点力」は英語習得の過程における段階的な「目標」であって、「目的」ではないこと

 

を忘れてはいけません。
そして、

 

「合格」や「得点力」の先にある、「高い英語力を獲得すること」が本当の「目的」であること

 

に目を向けなければなりません。

 

 

 

「得点力」=「英語力」ではないことを痛感した実例

 

たとえば大学受験対策として動詞の語法を指導するとき、

 

動詞finishは動名詞(~ing形)を目的語に取る

 

を生徒に学習させます。

 

四択の空所補充問題で、finishの後ろが空所になっている場合、この知識を利用して、選択肢から動名詞(~ing形)を選ぶことができれば正解になるのですが、果たしてその生徒は本当にfinishとその目的語の使い方を身に付けたことになるのでしょうか?

 

I have already finished (doing) my homework.
「私はすでに宿題を終えた」

 

のような文で、常にdoingを目的語に置かなければならないという意識ばかりにとらわれて、単にmy homeworkという名詞を目的語として置いても良いことを受け入れられなくなってしまわないでしょうか?

 

The construction of that building has just been finished.
「そのビルの建築はちょうど終わったところだ」

 

のような文で、文の見た目にとらわれて、finishの後ろに何も置かれていないことに戸惑ったりはしないでしょうか?

 

文法問題対策の授業、特に学力レベルの低いクラスの授業では、安易に

 

「finishの後ろには動名詞(~ing)が続くから覚えておきなさい。そうすればこの問題は解けるから」

 

といった楽な説明に陥りがちです。
ひどい場合には、

 

「空所の前後さえ見れば全文を読まなくても答えは分かる」

 

などと言って、目の前の英文そのものとの触れ合いを許さないアドバイスまで平気でおこなわれています。

 

確かにその説明と理解だけで、finishの語法が問われる問題を解くことができるようにはなるでしょう。finishがto不定詞を目的語に取らないことも正しい知識であり、大切なことです。全文を読まずに答えが分かれば時間の節約にもなるでしょう。

 

しかしそれは、点数の稼ぎ方の指導であって、英文の理解に本来必要な文全体の構造把握や、英語力として求められる英作力などとは別の次元の話です。

 

実際、私も生徒から

 

「“Those snakes are considered to be dangerous.”(それらの蛇は危険だと思われている)という文で、どうしてconsiderの後ろにto doが来ているのですか?」

 

と質問されたことがあります。その生徒によると、彼らの文法の授業を担当していた別の教員に、先のfinishのように

 

「considerの後ろには動名詞(~ing形)が来るから覚えておきなさい」

 

と教わった、とのことでした。

 

点数の稼ぎ方の指導の結果、頭の中で「considerという単語の後ろには動名詞(~ing形)が置かれる」という単純な発想しか持てなくなってしまっていたのです。

 

すぐに私が文構造(つまりS consider O to be Cの受動態としての構造)を解説するとすっきりと理解してくれたのですが、生徒たちが「おや?教わったことと違うな?」と感じてしまう英文に出くわすであろうことは、語法を最初に指導した教員は知っていたはずです。

 

finishもconsiderも目的語に動名詞(~ing形)を取る。

 

これは試験に合格するためには必要な知識ですが、その知識がfinishとconsiderの使い方を定着させ、生徒の英語力を高めてくれるものでは必ずしもないことを痛感した瞬間でした。

 

このような得点力向上主義による問題を抱えたままでは「高い英語力を獲得する」という「目的」に到達することはできません。

 

生徒たちに、より高いレベルでの英語力の獲得を目指して欲しいと本当にあなたが望むなら、

 

  • 文の要素(SVOC)とその品詞をはじめ、受動態の文構造における目的語の位置など、問題対策としての語法の説明に限定しない幅広い視点からの解説を行う
  •  

  • 生徒に様々な「英語の使用」に触れさせ、さらにはその理解に基づく音読や英作の訓練などを取り入れ、定着を図るようにする

 

これらのことが大切だと思います。

 

あなたの指導は生徒の未来に必ず生きる

 

ここまで述べてきたように、大学合格や得点力の向上といった結果は、小手先のテクニックに頼っているだけでは、たとえその過程で生徒が一定量の知識を身に付けたとしても、それは必ずしも彼らの英語力を保証するものではありません。

 

つまり英語の指導は、生徒が合格したら終わりではなく、得点が十分に上がれば学習をやめさせてもいいということでもないのです。

 

テストで一番の成績を取った生徒や難関大学に合格した生徒がみんな流ちょうに英語を使いこなせているわけではない、という現実と向き合うとき、

 

私たち指導者には、生徒たちの「合格」や「高得点」の先にある未来の英語力を見据えた指導が必要

 

ということに気づかされます。このことを決して忘れない指導者を目指してください。

 

ときには他の教員から「あなたの指導は受験対策に向いていない」と批判されることもあるかもしれません。

 

それでも、あなたが生徒の未来の英語力を見据えた指導を信じて行う限り、それは必ず生徒たちの信頼を呼び、「合格」や「得点力」にも繋がり、さらにはあなたのもとを巣立った後も、彼らの中に生き続けます。

 

生徒たちは、「合格」や「高得点」ではなく、「あなたの指導」を通過点として必ず伸びていきます。

 

「真の英語力の高さは未来に獲得される」と信じることのできる指導者を目指してください。

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