英語で授業すること(オールイングリッシュ)のメリット

英語で授業すること(オールイングリッシュ)のメリット

英語で授業することのメリット

 

オールイングリッシュによる授業について賛否両論あるのですが、少なくとも「日本語だけが望ましい」とか「すべて英語で行われるべきである」というのは、極端すぎるような気がします。

 

一方で、賛成していても、意図が現場の意見を反映されていないと感じることがあります。例えば「ネイティブが教えるのが理想だが、予算的に不可能。妥協点として、日本人の英語教師が全部英語で授業をすればよい。」という理屈です。

 

ネイティブによる授業や海外留学が万能ではないことは、別の記事にまとめてありますので、興味のある方はそちらをお読みください。(「留学=英語力の向上か?(前編)」をクリック

 

私の考えるオールイングリッシュによる授業の一番の利点は、「英語を使おうとする雰囲気づくり」であると考えます。学校の中だけを考えてみても、他の教科はすべて日本語を通じて行われるので、外国語である英語を学ぶ時には、英語による授業を実施したほうが生徒の気持ちも前向きになると思います。

 

時々「日本人の英語教師の英語はネイティブのように流ちょうではないから、そんな英語を何時間聞いたところで英語が身につかない。」という批判を耳にしますが、ハッキリ言って勘違いもいいところです。

 

発音を過度に気にする人が多いのですが、最低限の許容範囲を満たしていれば、それほど気にすることはありません。通じない場合は、そもそも語順に致命的な誤りがあったり、言葉が全く出てこないことがほとんどですから、発音については優先順位は高くありません。

 

日本は同質な国であり人口の98%が日本人であると言われています。そんな「特殊な」環境で英語を勉強する時に、無理やり人工的な環境を作って英語での発言を促すというのは、非常に貴重な機会だと思うのです。

 

そこには流ちょうな英語が求められるわけではなく、多少ぎこちなくても母語ではない英語を使って授業をする英語教員は、生徒たちのとりあえずの目標となってもいいのではないでしょうか。

 

帰国子女も増えている状況の中、教師より英語が話せる生徒がいることも珍しくありません。そんな時は、その生徒の助けを借りて授業を進めていけば、教室の中は英語を学ぼうとする雰囲気が高まるのではと感じます。

 

少なくとも海外経験があり英語を流ちょうに話せる生徒が居心地悪く感じるのは、健全ではないです。うまく授業に取り込んで、活躍してもらえばいいだけです。

 

さて、時々開催される大きな研究授業に出かけると、オールイングリッシュによる素晴らしい授業を目の当たりにし、一気にモチベーションが高くなる経験は誰でもお持ちでしょう。

 

そして、自分の学校に戻って実践しようとして、うまくいかなかったり、そもそも何から手をつけていいのか分からないまま、時だけが過ぎていく経験もまた、共感していただけると思います。

 

後で振り返ってみると、このような素晴らしい(文字通りの)オールイングリッシュによる授業には、語られていない前提が多々あるように感じます。たとえば、

 

  • 教科書の内容を英語のまま理解している!

→生徒は、日本語訳をすることによって、前もって十分にテキストの内容を理解している。

 

  • 先生の英語を聞き取れる!

→教科書の内容については全訳(日本語)が与えられていて、自宅で目を通している。

 

  • 生徒が英語で答えている!

→教科書の本文が答えになるように、質問が工夫されていて、生徒はそれを抜き出すことでほとんど対応できる。(日頃からこのような経験を積んでいる)

 

というようなことです。このような事情を理解せずに、普段からすべて英語だけで理解していると思い込むと、自分の学校でうまくいかない時に、自己嫌悪に陥ったり、勤務校の生徒のレベルが低いと嘆くことになります。

 

失敗の典型例として、オールイングリッシュによるオーラルイントロダクションがあります。教員の英語力が比較的高い場合、教科書の内容に関することを数分間しゃべりつづけたとして、理解できている生徒がどれだけいるか、ということです。これでは、生徒は何も身につけていないことになります。

 

「だからこれらの授業はインチキなんですよ。」

 

と言いたいのではありません。むしろ、オールイングリッシュによる授業を成立させる前提として、やはり日本語を通じて新出語を理解したり、文法の細かいニュアンスを理解したり、内容の概要を和訳を通じて理解するということがあるということを知る必要があります。

 

「よく分かっていること」を「より定着させ」そして「技能の向上につなげる」のが英語習得の正攻法でしょう。文法も意味もよく分かっている英文を何度も音読したり聞いたりすることが必要で、まずは「よく分かっている」状態にすることが優先です。

 

「英語を英語で理解する」ことが必要、と言われることがありますが、日本で生まれ育った普通の中学生に求めることはほぼ不可能ですし、母国語の助けを借りながら勉強したほうが効率がいいケースは山ほどあります。

 

一例を挙げると、新出語でfluently(流ちょうに)という単語を扱ったとします。これをオールイングリッシュで説明したところで、くどくどと長ったらしい説明をして生徒が嫌になってしまうのがオチです。日本語で「流ちょうに、という意味です。(それでも生徒が分からない表情をしていたら)『ペラペラ』ってことです。」と説明すれば、あっという間です。

 

英語で授業することが目標ではなく、あくまでも生徒が理解し英語力を向上させることが目標です。教師の自己満足のようなオールイングリッシュの授業は最も避けなければなりません。

 

ここまで読んでいただいて、「オールイングリッシュのメリットと目的」を正しく認識していただけたと思います。

 

それでは、これから自分の授業をオールイングリッシュで実施したい、と考えている教師はどのようなステップで進めていったらいいのでしょうか。それは、「英語で授業するための(オールイングリッシュ)の戦略」のところで、詳しく述べたいと思います。