英語の文法を深く理解する

情報構造から文型を理解する2

第4文型に関する話の続きです。

 

もう一つ、英語には「文末焦点の原則」という考え方があることも加えておきます。

 

これは、古い情報や意味的に重要でない情報を先に出し、逆に新しい情報や意味的に重要な情報を文の後ろへ置くことで、そこに話し手の焦点(主張)を置く、というものです。

 

That is Tom.と言えば、その焦点はTomにあり、あそこにいるのはジョンでなければマイケルでもケンでもなく、あくまでトムなのだという話者の新情報の投げかけが意図されます。

 

逆にThatは自分も相手も理解している旧情報(特に代名詞など、わざわざ説明しなくても互いに何を指しているか分かるもの)ですから文の早い段階に置かれるのです。

 

John gave Mary a present.ではa presentが焦点であり、メアリーに対して「何を」あげたのかが重要視されています。gaveと最も結びつきが強い語は当然直接目的語のa presentですから、これが文末に置かれる理由はこの「文末焦点の原則」によっても説明できるのです。

 

gaveとの間にMaryを挟んだとしても、「文末焦点の原則」を利用すればa presentの意味やgaveとの結びつきが弱まることはありません

 

逆に、John gave a present to Mary.と第3文型で言った場合、プレゼントを「誰に」あげたのかに焦点が当たっていることになります。

 

問題集などではこの書き換えを生徒にやらせますが、単に機械的に置き換わるのではなく、語順を変えることで意味まで変わることは知っておくべきことです。

 

(このような理解があるからこそ、John gave it to Mary.は言えてもJohn gave Mary it.が不自然であることも分かるわけです。代名詞は旧情報ですから、新情報を置くはずの文末にitを置くことは不自然に感じられるのです。)

 

 

第4文型に関してもう一つ面白い話があります。次の文章を見てください。

 

John gave Mary a kiss.

 

「ジョンはメアリーにキスをした」という意味ですが、これを第3文型に置き換えてJohn gave a kiss to Mary.とするのは好ましくありません。

 

「キス」という行為は瞬間的行いであり、相手(この例文の場合はMary)に到達してはじめて成立するものだからです。

 

第3文型とした場合、「ジョンはメアリーにキスをしたが、メアリーはキスを受け取ったかどうか分からない」という解釈が可能になります。
これでは矛盾が生じます。「キスをした」と言っている以上はメアリーはこれを必ず受け取っているはずです。

 

つまり第4文型では、目的語によっては第3文型への書き換えを容認しないケースも存在するのです。

 

その意味でも、文型は機械的に考えるのではなく、意味を中心にその語順を理解することが大切なのだということが言えます。

 

 

少し長くなってしまいましたが、単に形としてS+V+「人」+「もの」の順番だと機械的に覚え(させ)るのではなく、きちんとした理屈や理由を持ってとらえてみると、それだけでシンプルな文であっても読み方や認識の仕方が大きく異なってくることがお分かりいただけたのではないでしょうか。

 

ここまで考える必要があるのかと疑問に思われるかもしれません。実際に受験や検定試験などでこの種の知識が問われることはまずありません。

 

ですが少なくとも、こうした知識が今後の英語学習の理解を大きく助け、正しく英語に触れる上で役立つことは間違いありません

 

 

学力や英語に対する意識の高い生徒ほど、このような話はうけます。

 

以前に超進学校で教えていた頃、私は上記の話を中学3年生にしていました。中学1年生の頃から基礎を徹底した上でそこまで英語の本質に踏み込んだ学習をしてきた生徒は、逆に参考書が単調すぎて面白くないと愚痴をこぼしてさえいました。

 

表面には表れにくい英語の深みや本質を知らないと満足しなかったのです。そしてそれくらい深く学んでみると、「英語ってこんなにおもしろいのか」と分かってくれたのです。

 

 

第5文型におけるOC間の意味関係

 

最後に第5文型です。これは目的語Oに対する「Oはどんな状態なの?」という問いかけに「O=Cだよ」とOの状態をCで補うことで成立する文型です。

 

My parents named me John.「両親が僕をジョンと名付けてくれたんだ」という具合です。

 

 

一つポイントとして押さえていただきたいのは、OとCの間に意味的なSV関係があるということです。My parents named me John.のOCの間にはI am John.というSV関係が認められます。

 

このように、文の要素としてではなく、意味として考えたときにOC間に認められるSV関係のことを専門用語で「ネクサス関係」または「ネクサス構文」と呼びます。
(これについては別記事「英語の文型を教えた後、使役動詞や知覚動詞を用いた文章を文型的にどのように教えたら良いのでしょうか?」でも説明していますのでご覧ください。)

 

 

やはり英語は機械ではない

 

このように、文型の成り立ちを意味の流れの観点から見つめるとその理屈や感覚がよく分かります。

 

S・V・O・Cの組み合わせと語順を機械的に決められたものとして表面的な形だけ教えるのではなく、なぜそもそもSが文頭なのか、なぜVがそれに続くのか、OやCは意味的にどのようなはたらきをし、なぜそこに置かれなければならないのか、という原理を本質的に理解し、背景にある人間の心理をとらえ、できれば生徒にも分かり易く伝えながら学ばせてください。

 

形だけをとりあえず教えるという簡略化された指導は、はじめのうちは正しい方法だとは思います。

 

しかし本当に言語として理解して使うことができるようにするためには、言語話者は人間であり、その心理が言語形成に重要な役割を果たしていることを感じ取らせることが大切なのです。

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