英語文法を単純化して教える際のジレンマ

英語文法を単純化して教える際のジレンマ

以前、別の記事「have to を助動詞として教えるか?」の中で、I play soccer. は本来、 I do play soccer. であることに触れました。

 

「一般的には省略(単純化)して教えられているが、実は〇〇です。」

 

というのは英語の文法を教えていて結構多いものです。

 

英語の文法を深く理解すればするほど、本質的なことをいつどのように伝えるのか、または、伝えることに意味があるのか、に悩むようになります。

 

上記のケースで言えば、助動詞の知識を先に教えないといけないのですが、一般動詞を学んだばかりの中学1年生に教えたとしても、理解することは困難でしょう。

 

また、仮にそれを理解させたとしても、コミュニケーションツールとして英語を捉えるなら、単純化された文法を理解して、例文を何十回も暗唱したほうが役に立つかもしれません。

 

be動詞を「~です」と単純化して教えていいのか?

 

be動詞を「~です」と教えることには私も前向きにはなれません。

 

be動詞は「いる・ある」という所在を表すため、be以下は「~という状態で存在している」の意味に本来はなります。

 

ですから、I am Taro.のTaroは「私はタロウという状態で存在している」の形容詞的意味であり、厳密にはI am as Taro.のように前置詞句(形容詞)を従えた解釈をするべきだと思います。

 

進行形でTaro is playing soccer.と言うとき、playingは通常は現在分詞(形容詞)として働いているとみなします。

 

これも元来はTaro is in playing soccer.(つまりplayingは動名詞)であり、「タロウはサッカーをすることの中にいる」つまり「サッカーをしている状態にある」という意味であることからも、be動詞がいきなり名詞を従えているわけではないことが分かります。

 

(蛇足ながら、He is busy working on the project.のような、be busy -ingなどの語法も、He is busy in working on the project.と説明することができます。)

 

I amやTaro isで主語の存在を示したところで、その状態を説明する前置詞句を加えている。

 

だから一般動詞(自動詞)の場合も、I drink「私は(ふだん)飲む」と日ごろの行いとしての動作を示したところで、その状況にさらに説明を加えるために前置詞句やその他の副詞(句)(節)などを置いていくことで、左から右へと文を構築していくということですね。

 

文章は形容詞(句)(節)や副詞(句)(節)によってまとまった意味情報を加えていくのであって、主語や目的語といった文構造上の必要以外では、名詞単独ではその役割を果たすことはできない。

 

このようなことがThis is a pen.やI am Taro. という英語をややこしくしている、という感想をお持ちの方もいらっしゃると思います。

 

ですから、私もそのことには全くの同感で、be動詞については解釈上の問題として「ある状態としての所在・存在」が重要であり、これを無視して「~です」という日本語訳で教えていては英語の理解を確かなものにさせられないため、私もこれは避けるべきだと思います。

 

正しいことは結構だが、問題はいつどのように指導するか

 

ただ、こうした考え方をどの段階でどのように生徒に指導し、理解、体感させるのか、という問題は一方では考えなければならないとも思っています。

 

もちろんbe動詞を「~です」とははじめから教えはしませんが、ではI am Taro.を上記の理由で「I am as Taro.のように考えるんだよ」と本質的に指導するのはいつであるべきか、ということです。

 

特に初期の段階では、中学低学年(または小学生)がこれを理解するのは難しそうですから、それよりも実際の使用としてS be 名詞.があり得ていることを身に付けさせること(一般的な解説による補語としての名詞の使用を通じて)の方がまずは重要な気がします。

 

そして自分の知らない外国の言葉を口にすることの不思議な面白さを感じさせることや、あまり深い理屈はよくわからなくても英語の雰囲気を優先的に作っていくことも、やはり初期段階では大切なことだと思っています。

 

本質的な理解が先にあるべきか、それともまずは豊富に英語に触れさせ実使用に準じた形を定着させるべきか(もちろん文構造も意味も一通り理解させた上で)、これは意見の割れるところだとは思いますが、特に小学生や中学生などの初級段階では、私は後者を優先する立場にあります。

 

今の日本における英語教育に不足しているのは、私も含めて指導者の英語に対する深い見識もさることながら、生徒に現代英語の実際的な使用を豊富に訓練させることだと感じます。(上に述べたような面白さの体験や雰囲気作りという目的も含めて。)

 

もちろん、深部まで理解していないのに訓練ばかりさせて意味があるのか、という批判があるのは承知しています。

 

ただ、私の個人的な体験としても、豊富な例文と接し、発話を訓練することで英語が定着し、ずいぶんあとになってから「言われてみれば確かにbeは「~です」じゃないな、beの後の名詞はややこしいかもな」くらいにしか思わなかったこともあります。

 

その気づきは、後の英語知識の深化に確かに貢献してくれましたが、技能のブラッシュアップという意味においては、それがどこまで貢献してくれたのかはよく分からないのが正直なところだったりもします。

 

もちろん、だからと言って無意味なことだとは全く思いません。

 

「~です」と教えるべきではないことが分かったことは指導者として価値があることですし、正しい知識がより効果的かつ効率的な生徒の英語力向上に役立つとも確信しているからです。

 

生徒の中には、知識欲が高く、飢えた生徒もいます。もちろん一方ではほとんど何も理解できない生徒もいます。

 

生徒の学びのペースや理解力には当然個人差があり、訓練すべき量も生徒によって違いますので、何をどこまでいつ教えるか、を日々生徒たちの様子と状況を見ながら考え、適当なタイミングと指導法を模索しているところです。

 

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