英語の5文型を教えた後、使役動詞や知覚動詞を用いた文章を文型的にどのように教えたらいいのでしょうか

英語の文型を教えた後、使役動詞や知覚動詞を用いた文章を文型的にどのように教えたら良いのでしょうか?

①The news made me sad.
「その知らせは私を悲しくさせた」

 

②The news made me cry.
「その知らせは私を泣かせた」

 

これらはいずれも使役動詞makeが用いられた文ですが、①ではOの後ろに形容詞が、②では原形動詞がそれぞれ置かれています。

 

一般的にはどちらも第5文型(SVOC)の文とみなされますが、文型指導の段階では、Cに置かれるものは名詞または形容詞と教えるため、②のように原形動詞が置かれる場合にはこれをどのように説明するのかが問題になります。

 

 

実は、(ここからの話は必ずしも生徒に教える必要はありませんが)動詞の原形はもともと動詞を名詞化させるための形でした。

 

たとえば、

 

I will read the book.
「私はその本を読むつもりです」

 

この法助動詞willは、かつては「~することを求める」という意味の、現代英語で言うところの一般動詞(他動詞)のような使い方がされていました。(助動詞として用いるようになったのは英語の歴史的には比較的新しいことです。)

 

つまり、read the bookはもともと「本を読むこと」という意味の目的語であり、文全体として「私は本を読むことを求める」という意味だったということです。

 

read the bookは目的語ですから、名詞として機能していたわけですね。

 

 

動詞の原形が名詞として機能していたと聞くと驚かれるかもしれませんが、現代英語でも、原形動詞の持つ名詞的性質を感じられることは多くあります。

 

たとえば、

 

Study hard.
「一生懸命勉強しなさい」

 

これは命令文ですが、「勉強すること」ということがら(名詞)を相手に投げかけているというイメージです。

 

日本語で「一生懸命勉強すること」のように体言止めで発話しても命令の意味を持たせることができることに通じるものがありますね。

 

 

もう一つ、今度は知覚動詞を用いた例を挙げてみます。

 

I saw him cross the street.
「私は彼が通りを渡るのを見た」

 

 

この文は、crossingのように現在分詞を置いた場合の「通りを渡っているところを(部分的に)見た」というニュアンスと異なり、「通りを渡るという動作の一部始終(渡り始めから渡り終わりまで全て)を見た」というニュアンスになることを教えますが、「通りを渡ること」という出来事(名詞)は、渡り始めてから渡り終わるまでを完了して初めて成立するものです。

 

つまり、名詞としての動作は、「その動作の始まりから終わりまで全て含む」からこそ、「一部始終」のニュアンスを生み出すということです。

 

 

このように、原形動詞は動作としての意味を十分に保ちつつ、一方で品詞機能的には名詞の役割も兼ねています。

 

だから、文の要素Cを担うこともできるのです。

 

ただ、この原形動詞の名詞的性質(そもそも原形動詞とは何かということ)はめったに教えられるものではありませんし、必ずしもその必要もありませんが、そのように理解しておくといろいろと見えてくるものがあるものです。

 

たとえばto不定詞のtoは、なぜ前置詞であるにもかかわらず原形動詞につくことができるのか、という疑問もこうした原形動詞の持つ名詞的性質によって説明できる、といったようなことです。

 

ときどきto不定詞のtoは「前置詞ではない」とか「前置詞の例外的使用」のように、toを特別扱いするかのような教え方をする指導者がいますが、それは誤りで、to不定詞のtoもその他の前置詞と同様に「名詞を従える」という原理そのままに機能しているのです。

 

 

(ちなみに、これに関連する文法用語についてですが、人称や数などによってその形を定められることのない原形動詞のことを「不定詞」と呼びます。(to+動詞の原形)=「不定詞」ではありません。命令文の原形動詞も不定詞、助動詞の後ろに続く原形動詞も不定詞、今回話題となっているCにおける原形動詞も不定詞です。ですから(to+動詞の原形)は、本来は「to不定詞」とか「to付き不定詞」と呼ばなければなりません。細かいところですが注意したいところです。)

 

 

さて、このようなことから、

 

The news made me cry.
「その知らせが私を泣かせた」

 

は、「その知らせ」は「私が泣くという出来事(名詞)」を「生み出した」と解釈できるため、文型上もCに名詞を置いた第5文型として扱うことができます。

 

 

しかし、長い前置きとなりましたが、上記はあくまでまずは指導者が文型を納得しておくための知識にとどめておいてください。

 

生徒を指導するときに大切なことは、動詞の持つ名詞的性質といった文法的な解説や解釈よりも、OとCの語順とその背景に存在する意味の流れを理解させ、感じ取らせることです。

 

現象としてはCの位置に名詞、形容詞(分詞含む)、原形動詞が置かれることをまず理解させ、その上で、Oを主語(S)と見立ててCとの意味の結びつきを感じさせることです。

 

The news made me sad.
のOC間においては「私は悲しい」というS(be)Cの意味の流れがあり、

 

The news made me cry.
のOC間においては「私が泣く」というSVの意味の流れが存在すること。

 

S(be)CやSVという英語としての自然な意味の流れが背景にあるからこそ、OCがCOの語順にはならないこと。

 

Cに置かれるものが名詞、形容詞、原形動詞のいずれであっても、その語順と意味の流れこそがOCの本質であることを認識させてください。
(もちろん、Oは述語動詞の目的語ですからOの方がCよりも先に来ることも踏まえた上で、ですが。)

 

 

使役動詞や知覚動詞に限らず、

 

We call him John.
「私たちは彼をジョンと呼びます」

 

 

He helped me solve the problem.
「彼は私がその問題を解くのを手伝ってくれた」

 

などの文でも同様です。OC間における「彼はジョン」というS (be)Cの意味の流れ、「私がその問題を解く」というSVの意味の流れをしっかりと理解させ、感じ取らせるようにしてください。

 

 

(蛇足ですが、このようなOC間に見出すことのできる意味の流れを「ネクサス関係」または「ネクサス構文」と呼びます。これはずいぶんと使い古された感のある用語なので最近はめっきり聞かなくなりましたし、むしろ教育現場では避けられる傾向に今ではあるように感じます。もちろん生徒に教える必要もありません。しかし、やはり指導者側の見識としては知っておいて損はないのではないでしょうか。)

 

 

英語はおよそ1500年の歴史の中で、かつて有していた格変化(日本語で言うところの「は・が・を・へ」といった格変化)を失った分、語順で意味を判断する言語へと変化を遂げました。

 

そのことを指導者自身がしっかりと自覚し、語順による意味の流れを重要視して文型をとらえ、指導し、定着させ、使いこなせるようにさせることを目指してください。

 

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