英単語力にどこまでこだわるか

英単語力にどこまでこだわるか

英語学習の一つの考え方として、「単語力は基礎力」ということがよく言われます。

 

「単語が分からなければ文は分からない」とも言われます。

 

確かにその通りで、英語に限らず言語を読み書き話し聞く上で単語力は必須です。

 

 

ところがこうも言われることがあります。

 

「単語さえ分かれば言いたいことが分かる」

 

文法の理解が曖昧でも、単語が理解できれば推測によってある程度文章の意味内容を読み取ることができるという考え方です。

 

もちろん文章よっては、それは十分に可能である場合も確かにあるのですが、私はこの考え方はいささか危険であると思っています。

 

少なくとも、指導者として「単語が分かれば文の意味も分かることがあるから」と殊更に強調して単語学習に目を向けさせるような、悪い言い方をすれば文法軽視につながりかねないような指導は避けるべきだと思っています。

 

まさか単語ばかり覚えさせて文法や読解などを指導しない教師がいるわけがないと思われるかもしれませんが、「単語が分かれば言いたいことが分かる」はとくに初級レベルの学習者には意外と深く根付いた考え方であるケースは少なくありません。

 

 

単語学習に縛られると英語力の伸長にブレーキをかけることがある

 

音読に関する記事でも散々触れていますが、英語力を高めるための訓練として音読が効果的であることは今更言うまでもありません。

 

そしてその音読をするための前提として、自分が読んでいる文章を発音も含めて完全に理解していることが必要となることもすでに述べています。

 

単語一つ一つの発音、単語と単語の音の連結や消滅、強弱、イントネーションといった音声面の理解、単語の意味、文法の成り立ち、そして文全体としての意味といった無音の面での理解。

 

これらを兼ね備えた音読こそが英語力を高めてくれるわけです。

 

ところが「単語さえ分かればなんとなく言いたいことが分かる」、を前提として英語と向き合い、音読活動もこの考え方のもとに行うとすれば、最悪の場合、単語の意味以外はほとんど何も分かっていないのに音読をしてしまうことになります。

 

これでは効果は得られません。

 

単語の重要性を否定はしませんが、単語ばかりに重きを置いた指導や考え方には注意したいところです。

 

 

単語が分かっても文が理解できない例

 

さて、発音や音読の話は音読指導カテゴリー内の記事を参照(こちらをクリック)いただくとして、ここではとりあえず次の文章をご覧ください。

 

You often hear it said that fathers want their sons to be what they feel they themselves cannot be.

 

これはずいぶん昔のものですが、かつての大学共通一次試験(現在の大学入試センター試験)の試行テストで出題された文章です。

 

いかがでしょう?

 

単語一つ一つはとても基本的な単語ばかりですが、文章全体としての意味が理解できるでしょうか。

 

さすがに現在こうした文章をセンター試験で見かけることはありませんが、それでもこれは非常に考えさせられるという意味では優れた例文だと思っています。

 

この文章を読み解くためには、You often hear it saidの5文型、形式目的語のitとこれを受ける名詞節を導く接続詞thatをはじめ、関係代名詞のwhat、さらには連鎖関係詞などの文法知識が必要です。

 

単語の意味に加えて文法知識、さらには頭から読み下すという英語の語順に従う理解が伴ってはじめて、
「あなたはしばしば聞く」
「それが言われていることを」
「それとは父が息子に~になることを望むこと」
「彼ら自身がそうなれるとは感じていないようなものに」
と解釈できるのであり、

 

文全体として、
「父親というものは自分の息子たちに、彼ら自身がそうなれるとは感じていないような存在になって欲しがっている、ということが言われているのをしばしば耳にする」
という意味に到達できるようになるのです。

 

 

加えて、極端な例にはなりますが、たとえ複雑な文法を伴わないJohn loves Mary.のような文についても、単語しか知らなければ「ジョンがメアリーを愛している」のか「メアリーがジョンを愛している」のか分かりません。

 

つまり、「単語さえ分かればなんとなく言いたいことが分かる」という考え方が通用しない文章は無数に存在し、しかもその考え方は先にも述べたように音読の効果をも妨害してしまうという点で、私はリスキーなことだと考えています。

 

 

単語学習の心理的効果と指導バランス

 

一方、単語学習には生徒の心理的にとても大きな効果があることは認めておきます。

 

「単語を覚えること」は、「文法を学んだり音読訓練をしたりすること」よりもシンプルな作業として実現可能な命題であり、覚えた単語を目にしたとき、文の意味の理解は別としても、「あ、これは覚えたやつだ」とすぐにその作業の効果を実感することのできる、いわば「即効性のある学習」であり、これによって生徒は達成感を得られ、さらなる単語学習へのモチベーションとなることも十分にあります。

 

だから指導は難しいのです。

 

単語学習が重要であることを指導者が認識し、生徒にその効果を十分に感じさせつつ、一方で文法と音読にもスムーズにつなげていかなければなりません。
 
当たり前のことではありますが、「単語と文法力」は相互に関係する力として、平行してバランス良く学習を進められるよう生徒を導く姿勢を忘れないでください。

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