英語の構文暗記の危険性と対処について

英語の構文暗記の危険性と対処について

英語学習の過程において、様々な事柄を暗記することは大変重要な意味を持ちます。

 

単語であれ熟語であれ構文であれ、暗記した事柄が文法理解や読解力の引き上げを促したり、試験問題の対策として得点力の向上に繋がったり、大きな価値を持つことになります。

 

知識から技能へと引き上げる流れの中で英語習得を目指すとき、知識の前段階、あるいは知識そのものとしての暗記活動の意義を完全否定することはできません。

 

しかし、暗記の成果というものは単語や構文テストなどで目に見えて分かりやすいものであるがゆえに、私たち指導者は、生徒の暗記による知識の定着につい喜んで、そこから先の実使用としての英語力の引き上げのための訓練を忘れてしまうことがあります。

 

「生徒はしっかり暗記しているのだから、その暗記知識を生かして英語を使うことができるだろう」と思い込んで、次に行うべき発話や英作のトレーニングを疎かにしてしまうのです。

 

これはいささか極端なことのように思われるかもしれません。

 

しかし、「暗記させたはいいけれどその次の訓練を全く行っていないな」と感じさせられることは、生徒の発言を聞いていれば明らかに分かります。

 

少し分かりにくいと思うので実例をご紹介します。

 

 

be able toをそのままbe able toと発話したケース

 

ある生徒が英語のネイティブスピーカーの教員に受験報告をしにやって来たときのことです。

 

「私は試験に合格することができました」
と伝えたいと思ったその生徒は、次のように言いました。

 

I was be able to pass the test.

 

 

ご存知の通りbe able toは表現として「~することができる」を表し、導入の段階からそのように指導します。

 

当然、これを用いた例文を提示したり、何度か自分のこととして英作の練習をさせたりもするでしょう。

 

比較的容易で、しかも頻繁に目にする表現であるため、それほど多くの練習を重ねなくても多くの生徒はbe able toを覚え、読解で目にしたときには読めるようになっていきます。

 

しかし、be able to=「~することができる」の暗記的指導をまずは優先し、その定着に満足するあまり、beには主語や文脈に応じて適切な形を当てはめなければならないという、文法的実使用への配慮と指導が疎かになり、結果的に、生徒の意識の中にはBE able toという響きばかりが定着し、この生徒のように誤った使い方に陥ってしまうことが少なくありません。

 

 

be以外の注意しなければならないケース

 

be動詞を用いた構文ばかりが問題になるわけではありません。

 

他にも私が経験したところでは、たとえばdo one’s best「(その人の)最善を尽くす」やmake oneself understood「(自分を)理解してもらう」のように助動詞doや代名詞one(self)などを用いた構文の指導においても同じような誤りを犯す生徒が見受けられます。

 

「彼は最善を尽くした」と言いたくて
He do one’s best.

 

のようにdoもone’sもそのまま使ってしまったり、

 

「私は英語が通じた」と言いたくて
I made oneself understood in English.

 

のようにmakeを過去形にしたはいいけれどやはりoneselfをそのまま用いて英作してしまったりと、

 

まさかと思うようなミスを生徒は実際に犯すことがあるのです。

 

one’sに代名詞を当てはめることには成功しても、their’sのようにアポストロフィー+sをそのままつけてしまうミスも見受けられます。

 

 

do one’s bestを覚えよう、make oneself understoodを覚えよう、と投げかけることは簡単です。

 

この程度であれば生徒は簡単に暗記してしまいますし、こちらの確認も簡単です。

 

しかしだからこそ、be、do、oneなどは文脈に適切な語を当てはめるのだ、という英作や発話のための重要な指導が手薄になってしまうことがあるため注意が必要です。

 

 

よくできる生徒ばかりのクラスでは問題ないのでしょう。

 

しかし、低学力の生徒たちの中には、ある意味で暗記することにしか挑戦できないレベル、暗記でしか勝負をしようとしないレベルの生徒たちもいます

 

彼らにとっては、助動詞doや代名詞はおろか、be動詞ですら別の単語を当てはめることに困難を抱えている場合も決して少なくないのです。

 

ある程度の学力を持った生徒でも、I was be able to pass the test.のように、暗記要素としてのbe(doやoneも含めて)の意識が先行して、英作で間違えてしまうことはあります。

 

 

構文暗記から実使用の英語力へ

 

せっかく構文を覚えても、それが使いこなせなければ意味がありません。

 

では、ここまで述べてきたような問題を解決するためにはどうすればよいのでしょうか?

 

まずは、暗記を促す段階で、beやdoやoneには適宜文脈に応じた語を当てはめることを強調してください。

 

暗記した表現をそっくりそのまま使うことはできないことを認識させるのです。

 

次に、対象の構文や表現を含む文章を、簡単なもので構いませんから、大量に用意してください。

 

beにはis、am、are、was、were全てのパターンを含むもの、(will beやto beも含めて)
doにはdo、does、didを全て含むもの、
one’sにはmy、your、his、her、their、itsはもちろん、John’s、Mary’s、my father’sなど、さまざまな人物を含むものを、

 

とにかく大量に用意して、時間の許される限り何度も目に触れさせ、音読を通じて身に付けさせてください

 

willなどを伴う場合を除いてBE able toと発話することやone’sをそのまま発話することなどは無いのだということを、口の動きとして体感させるのです。

 

そして英作とスピーキングを実践させ、自ら適切に表現する訓練を積ませてください。

 

その後も折に触れて、こうした構文の含まれる文章が登場するたびに一言だけでも注意点として触れ、さらに発音練習させるように心がければ、生徒の意識の中でbe able toやmake oneself understoodなどは知りつつも、文脈に応じてこれを適切に使う力が養われていきます。

 

 

構文暗記は重要です。それ自体に価値があることは否めません。

 

しかし、私たち指導者は、あくまで実使用の観点から、これを可能とするために生徒を訓練しなければならないことを心得て、日々の指導に当たってください。

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