比較級で使用されるthanを「~より」と単純に教えることの弊害は?

比較級で使用されるthanを「~より」と単純に教えることの弊害は?

thanに「~より」という単純な日本語訳を与えて教えることの弊害は、比較構文の原理を考えられない生徒を生んでしまうことです。

 

そもそも比較構文は、何と何が比べられているのか、という比較対象を明確にすることで成り立つ構文です。

 

「何と何」とは「SVとSV」であったり「名詞と名詞」であったりするのですが、これらの対象を明確に理解させないと、正しく比較構文を身に付けさせることはできません。

 

たとえば次の文を見てください。

 

He runs faster than I do.
「彼は僕よりも速く走る」

 

という文では、He runsというSVとI runというSVが比較対象としてその速さの点で比べられています。

 

このとき、SVとSVが一つの文中に同時に表れているため、thanは文法的にはこれらを繋ぐ接続詞として機能し、意味的には「両者の間に差があること、かつ主節の方が程度が高いこと」を表しています。

 

より端的に言うと、接続詞thanは「一方(主節)がもう一方(than以下)よりも程度が高いこと」を意味する場合に用いられます。

 

これを自然な日本語に訳すと「~より」となるわけですが、SVとSVの関係をしっかりと意識させていなければ、英作などで安易に

 

He runs faster than me.

 

としてしまいます。

 

これは必ずしも間違った文とは言えないのですが、中学校で教えるときにはまずは構造的な成り立ちを厳密に教え、定着を図るべきです。

 

(ちなみに、主節に他動詞が置かれる場合、than以下に主格を置くか目的格を置くかで意味が異なることや、そうした場合のthanは前置詞として機能するとみなされることなどを教える必要もいずれ出てきますが、これについてはここでは触れません。)

 

さて、こうした比較対象を明確に認識することの重要性は、将来、次のような文における誤りを回避するために重要です。

 

The temperature of Okinawa is warmer than Hokkaido.(×)
「沖縄の気温は北海道よりも暖かい」

 

thanを単純に「~より」と教えている場合、この文章が間違っていることを感じられません。

 

過不足なく完璧に日本語を英語に直しているように見えるからです。

 

しかし大切なことは、比較対象の明確化です。

 

比べられているのは沖縄と北海道それぞれの「気温の暖かさ」であり、「沖縄の気温」と「北海道という場所」ではありません

 

つまり、the temperature of Okinawa isとthe temperature of Hokkaido isという同じまとまりの構造を持ったSV動詞が比較されているということです。

 

したがって、正しくは

 

The temperature of Okinawa is warmer than the temperature of Hokkaido is.

 

ということになります。

 

そして重複するthe temperatureを代名詞thatに置き換え、さらに文末のbe動詞も省略した

 

The temperature of Okinawa is warmer than that of Hokkaido.

 

という文が最終的に最も自然で正しい文であることを教えてください。

 

こうした比較構文の構造理解は、大学入試問題などでも問われます。
もちろん試験のための知識としてだけではなく、確実に使える力として大切なこととしてとらえておきましょう。

 

 

ここからは、私から先生方への例題です。

 

「私が片足で立つよりも長い時間、彼は呼吸を止めることができる」という英文を作るとしたら、中学生にも分かりやすく教えてみてください。

 

 

ここまでで説明してきたことを踏まえて考えてみます。

 

「私が片足で立つことができる」というSVと、「彼は呼吸を止めることができる」というSVが比較対象で、両者が時間の長さの点で比較されていることをまずは理解しましょう。

 

前者は
I can stand on one leg. ※stand on one legで「片足で立つ」

 

後者は
He can hold his breath. ※hold one’s breathで「息を止める」

 

です。

 

 

ここでは「彼の方が長時間息を止められる」、つまり「私よりも程度が高い」ため、

 

「一方(主節)がもう一方(than以下)よりも程度が高いこと」を表す比較級を用います。

 

つまり、

 

(主節SV+ 比較級 than+ SV.)

 

これが目指すべき形ということになります。

 

主節の方が程度が高いわけですから、He can hold his breathが先に来ます。
(二つのSVの順序が日本語とは逆ですね。)

 

 

次に比較級にする単語ですが、

 

「(時間的に)長く」を意味する語はlongですから、これを比較級longerにして使います。

 

 

最後に、than以下に残りのSVを繋いで

 

He can hold his breath longer than I can stand on one leg.

 

という文が完成します。

 

 

比較対象(SVとSV)を明確に、
程度の高い方を主節に置いた(主節SV+比較級than+SV.)の構文を目指し、
主節SVを置いたら適切な比較級を用いてthan以下に残りのSVを繋げる。

 

 

このようにして確実な英作を目指してください。

 

 

 

(追記)
ここでは構造を正確に、という点に重きを置いたため、SVとSVを準備するところからはじめる英作を提案しました。

 

しかし理想的には、左から右へという語順に従って、まず主節SV→比較級than→残りのSVへという感覚で英作ができることを目指さなければなりません。

 

そのためには、上記のようにしてできた文章を下敷きに、音読の繰り返しによって語順に従う感覚を養う必要があるということを加えさせていただきます。

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