have toを助動詞として教えるか?

have to を助動詞として教えるか?

have toを助動詞として教えるか?

 

中学2年生への助動詞の指導に関して、次のような質問を受けたことがあります。

 

「参考書にはhave toが助動詞として説明されているのですが、そうするとdon’t have toになることが説明できません。どのように指導すればよいでしょうか?」

 

 

2種類の助動詞を確認する

 

助動詞には大きく分けて2種類あります。

 

一つは、will、can、may、must、shouldといった、明確な意味を持って話者の心情を伝えようとする助動詞で、これを法助動詞と呼びます。

 

一般的な参考書や授業で指導する「助動詞」はこれら法助動詞のことを指しています。

 

もう一つは、法助動詞ほど明示的な意味を持たず、どちらかと言えば文法機能上のはたらきとして疑問文や否定文、進行形や完了形などを作るために必要な助動詞で、これを文法助動詞と呼びます。

 

文法助動詞にはdo、did、be、haveなどがあります。

 

まずはこれら2種類の助動詞が存在することを理解してください。

 

 

一般動詞の述語動詞は助動詞と本動詞の組み合わせ

 

文における一般動詞を用いた述語動詞(V)は、基本的に「助動詞+本動詞」という構成でできています。

 

I will call you tonight.
「今夜君に電話するよ」

 

この述語動詞部はwill callで、法助動詞+本動詞の形で成り立っていることが分かります。

 

このように法助動詞を用いた文章では分かり易いのですが、文法助動詞を用いた文ではその構成が少し見えづらくなっています。

 

I play soccer.
「私はサッカーをします」

 

これは一見すると助動詞が見当たりませんが、厳密にはI (do) play soccer.です。

 

I played soccer.
「私はサッカーをしました」

 

であればI (did) play soccer.ですね。

 

do/didが助動詞で、playが本動詞です。

 

このように肯定文では現在形のplayや過去形のplayedがすでに助動詞を包括する形で取り込んでしまっているため、見た目には助動詞の存在が確認できませんが、実際には目に見えないところで確かに助動詞は呼吸していま

 

疑問文や否定文にしたときに

 

Do you play soccer?
I don’t play soccer.

 

のように突如として助動詞が取ってつけられたかのようになって表れますが、肯定文にそもそも取り込まれていたところから、疑問文や否定文ということなる形態の文になったときに、それを体現するために位置を移動したのだと考えてください。

 

三単現のsがイメージしやすいと思いますが、

 

He plays soccer.
「彼はサッカーをします」

 

はHe (does) play soccer.であり、三単現のsとは、取り込まれたdoesのお尻がはみ出してしまったものであるように考えられなくはありません。

 

 

いずれにしても、法助動詞であれ文法助動詞であれ、「助動詞+本動詞」の組み合わせによって述語動詞(V)が成り立っていることをまずは理解してください。

 

 

have toのhaveは、文法上はあくまで一般動詞

 

have toの否定形がdon’t have toになるのは、haveが一般動詞だからに他なりません。

 

I have to do something.
「私は何かやらなければならない」

 

これはI (do) have to do something.であり、その文法助動詞がdoであるからこそ、否定形でdon’t have to doになるのです。

 

なお、この「~しなければならない」意味でのhave toは、原理的には、I have something to do.「私は何かやるべきものを所有している」から派生して生まれた用法で、その点からもhaveは他動詞、つまりは一般動詞であることが分かります。

 

一般動詞ですから、すでに述べたようにこれを否定する形は当然don’t haveであり、haveは文法助動詞do+本動詞haveで一つの述語動詞(V)として機能していることになるわけです。

 

 

助動詞have toとはどのような考え方によるか

 

have toのhaveは一般動詞であると述べました。

 

ところが実際には、参考書などではhave toは助動詞として説明されています。

 

この矛盾を解決するために私たちが知らなければならないのは、文型を考えるとき、それぞれの要素が文法原理に忠実に則った文型判定である場合と、そうではない場合が存在するということです。

 

どういうことかと言うと、たとえば

 

He is running.
「彼は走っている」

 

この文の文型を考えるとき、二通りの判定が可能です。

 

①He=S is=V running=C
これが文法原理に忠実に則って判定した場合です。
これを「構造上文型」と呼びます。

 

他方、
②He=S is running=V
このようにbe+-ingを進行の意味のまとまりを作る一つの述部と「みなして」大きなVとして判定することもできます。
これを「意味上文型」と呼びます。

 

これら2種類の文型判定は、どちらが優れているとか、どちらがより正しいといったものではありません。

 

あくまで文の意味解釈に誤解が生じないように便宜的に、そして柔軟に取り入れられればその役割を十分に果たすものです。

 

問題は、指導者がそうした判定の柔軟さを知らずに、動詞はVであるべし、前置詞句は修飾語句であるべし、のように思い込んでしまうことです。

 

 

たとえば

 

He has the book.
「彼がその本を持っている」

 

この程度の文であれば文型に迷うことはありません。

 

ところが、

 

He has read the book.
「彼はその本を読んだことがある」や

 

He has been reading the book for an hour.
「彼は1時間その本を読み続けている」

 

のようにとりわけ述部が複雑な形態となるとき、構造上文型での説明が困難になることがあり得ます。

 

hasをV、readをCとすることはできても、has been readingをどのように分解すればよいのか回答に窮します。

 

そうした場合、has やhas beenを助動詞と「みなし」、has readもhas been readingも一つの動作の意味のまとまりとして述部(V)として扱ってしまった方が意味の理解において分かり易く、都合が良いのです。

 

もちろん、前者が基本的な現在完了形であること、後者が現在完了形に進行の要素が加わったものであることは、構造的にも理解する必要はあります。

 

ただ、あまりにも単語一つ一つの品詞やはたらきにこだわりすぎると逆に混乱のもとにしかならないこともあるということです。

 

したがって、have toを助動詞として扱うというのは、たとえば

 

I have to do my homework.
「私は宿題をしなければならない」を

 

have=V、to do=修飾語句(M)、my homework=Oなどとしていても実質的な利点がほとんど認められず、ただ複雑なだけであるために、have toを一つの助動詞として「みなし」、doを本動詞と扱うことでひとまとまりの述部(V)とした方が分かり易い、という理由に基づいているにすぎないのです。

 

先述の2種類の文型判定に照らし合わせるならば、
一般動詞haveは構造上文型による捉え方であり、
助動詞have toは意味上文型としての捉え方である、
ということなのです。

 

これを混同してしまうと、冒頭の質問のように、「助動詞なのに否定形ではdon’tが登場することが説明できない」という混乱に陥ってしまうのです。

 

 

なお、have toを助動詞として扱うことの利点には、法助動詞mustとの兼ね合いから、両者を共に助動詞として同列に扱った方が分かり易い、ということもあるでしょう。

 

 

中学2年生へのhave toの指導

 

上記のような内容を中学生に説明することはもちろんできません。

 

指導者側の理解としても、あまりにも複雑に考えても混乱のもとですから、

 

文法原理的にはhaveは一般動詞(だから否定形ではdon’tになる)、
意味的にはhave toで助動詞として「みなす」、

 

程度の理解で十分でしょう。

 

中学2年生に教える際には、mustを教えるタイミングでhave toも持ち出して、しかしこれを助動詞だとは言わずに、

 

「mustと似た意味を表す別の表現としてhave toという言い方がある」

 

くらいにシンプルに教えると良いと思います。

 

have toをあくまでmustとは異なる表現として扱っておけば、否定形がdon’t have toになることにも違和感がありません。

 

参考書でたとえhave toは助動詞であると書かれているとしても、その知識それ自体が後に必要になることはほぼありませんから、have toを助動詞だと教えることには、mustと対比させること以外にそもそもメリットが無いのです。

 

それよりも大切なのは、文構造がどうとか文法機能がどうとかいうことではなく、mustもhave toも(あるいはその否定形や疑問形も)、適切な文脈の中で使うことができるように仕向けることです。

 

だから、まずはmustとhave toの意味の違いを説明し、多様な例文と豊富な音読を通じて定着を図る活動を考えることです。

 

これを怠ると、生徒たちが高校生になったときに苦労することになりますし、心理的にもその後の英語学習への弊害ともなりかねません。

 

シンプルに、分かり易く教え、使いこなせるように豊富に活動を取り入れることを主眼に置いて指導にあたってください。

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