英文法「現在完了形」の指導について

英文法「現在完了形」の指導について

「現在完了形を指導してください」と言われれば、どのように教えますか?

 

生徒に理解させなければならないことは何でしょう?

 

文法学習の早期の段階で扱われる基本時制において、現在完了形を適切に指導することは非常に重要です。

 

それは、完了形の概念が私たち日本語話者にとって決してなじみ深いものではなく、そのせいで簡単に英語の苦手意識を生んでしまうことがあるからです。

 

ここでは現在完了形を取り上げ、その本質的な意味や指導ポイントを述べていきます。

 

 

現在完了形指導の注意点

 

現在完了形は、一般的には中学三年生で導入します。

 

have+過去分詞の基本形とともに、大きくは①継続「~し続けている」、②経験「~したことがある」、③完了・結果「~し終えた・~した結果・・・」の三つの用法を、それぞれ以下のような例文を用いながら教えるところからふつうは始めます。

 

①I have lived in Tokyo for three years.「私は東京に3年間住み続けている」
②I have been to Osaka twice.「私は大阪に2度行ったことがある」
③I have already finished my homework.「私はもうすでに宿題を終えた」

 

さらに、各用法の判断ポイントとして、①期間を表すforや時の起点を示すsince、②回数を表すtwiceやthree times、③すでに終えたことを表すalreadyやjustなど、それぞれの用法によく現れる特徴的な副詞も取り入れながら、各文章の用法と意味を理解させ、また使うことができるように教えられる指導者も多いでしょう。

 

中学三年生では、まずはこの基本をしっかりと定着させることが大切ですから、このような従来からのやり方は決して間違っているわけではありません。

 

 

しかし、その指導に際して注意しなければならないことがあります。

 

それは、生徒が現在完了形を、「日本語訳を頼りに」「三つの用法に分けられる」と思い込ませないようにすることです。

 

確かに現在完了形は三つの用法に意味解釈として分けられることは多くあります。

 

そして三つの日本語訳がある程度当てはまることも事実でしょう。

 

しかし、そこに頼りすぎると本当の意味で現在完了形を理解する(させる)ことはできません。

 

 

高校以降の英語学習においては、三用法を見分ける手助けとなるはずのsinceやalreadyなどの副詞が伴わない完了形の文章を目にすることも増え、そのためにどの用法が用いられているのか判断もできず、日本語訳もよく分からなくなることがあります。

 

そのような「はじめに習ったことと違う」という認識が完了形の意味不明さとなって生徒に襲い掛かることは珍しいことではありません。

 

 

そもそも、用法を見分けることや日本語訳を導き出すことが英文と向き合う目的ではなく、あくまで目の前にある英文をきちんと理解し、その呼吸をくみ取り、適切に解釈できるようになることがまずは肝要ですから、その意味でも用法や日本語訳に縛られすぎることは危険なことです。

 

 

では、基本形と基本用法とその意味の定着を図りつつ、より本質的には何を理解させないといけないのでしょうか?

 

 

現在完了形はあくまで現在形

 

そもそも論ですが、「時制」というのは、「現在・過去・未来」の三つの枠組みしかありません。
進行形や完了形、そして両者を合わせた完了進行形は、あくまで三つの時制の枠組みの抱える下位概念のようなものにすぎません。(これを「相」と呼びます。)

 

たとえば現在進行形は「現在時制における進行という相」であり、現在完了形も「現在時制における完了という相」でしかなく、「現在進行形」や「現在完了形」それ自体が独立した時制ではないのです。このことをしっかりと理解しておいてください。

 

時制と相の関係を一覧にすると以下のようになります。

相\時制

過去

現在

未来

基本

played

play(s)

am/is/are going to play

will play

進行

was/were playing

am/is/are playing

am/is/are going to be playing

will be playing

完了

had played

have/has played

(am/is/are going to have played)

will have played

完了進行

had been playing

have

has been playing

(am/is/are going to have been playing)

will have been playing

 

 

【時制と相の表】(拡大はこちらをクリック)

 

(余談ですが、時制を体系的にまとめるとこのように12のパターンが存在します。これらを中一から高校にかけて時間をかけて乱雑に学ぶため、生徒たちは(そして指導者すら)このように一貫した時制の仕組みを理解することができていないことが多くあります。やはり中一の段階から、最終的にはこの表のような理解を目指して指導するべきです。)

 

 

現在完了形においては、have+過去分詞のhave自体が明らかに現在形であることからもわかるように、あくまで「現在形」の範疇に収まるものです

 

この理解は非常に重要です。三用法のうち、特に②経験と③完了・結果については日本語訳的にどうしても過去形のように感じられてしまい、現在形であるはずなのに過去形の日本語になることへの違和感が現在完了形の理解の妨げになることが頻繁に起こるからです。

 

これが中三指導で注意すべきことの一つです。

 

 

では、現在形の範疇に収まる現在完了形とは、どのような意味を抱えているのでしょうか?

 

 

現在完了形は「過去と現在のつながり」

 

現在形である以上、現在完了形と向き合うときには必ず「現在」を意識しなければなりません。

 

先の基本例文をもとに考えてみましょう。

 

①I have lived in Tokyo for three years.「私は東京に三年間住み続けている」
これは、「東京に住み始めた三年前から現在に至る継続」、つまり「三年の時を経た今現在も東京に住んでいる」ことを意味しています。

 

 

②I have been to Osaka twice.「私は大阪に二度行ったことがある」
これは、単に「二度行った」という事実を述べているだけではなく、「二度行ったのだから大阪に関して現在何らかの情報を持っている」とか「二度行ったことによって現在大阪に対する何らかの気持ちを抱えている」とか、つまり「二度行った事実」が「現在の自分に与えている影響」を示唆しています。

 

I know what Takoyaki is. I have been to Osaka twice.「たこ焼きなら知ってるよ。大阪には二度行ったからね」
このような文脈があれば理解しやすいのではないでしょうか。「二度行った事実」が「現在たこ焼きを知っている事実」に結びついているのです。

 

 

③I have already finished my homework.「私はもうすでに宿題を終えた」
これは、「宿題が終わった」からこそ、「現在心置きなく遊びに行ける」とか「現在は手が空いている」といった意味を示唆しています。

 

この用法については、私はよくI have washed the car.とI washed the car.の比較において理解を促します。

 

どちらも「車を洗った事実」があるという点では意味を共有しています。ただし、現在完了形は過去と現在の繋がりを表しますから、前者の例文は「車を洗ったのだから現在その車は綺麗な状態だ」という意味を含み、一方後者の例文は「車を洗ったのは事実ではあるが、現在の状態はどうなっているか分からない。汚れていることもあり得る」と説明します。

 

単純過去は現在から切り離された過去の一点のできごとであって、現在車がどのような状態になっているのかは問題にはならないことを理解させるのです。

 

 

このような説明をしながら、現在完了形の抱える現在の意味や、日本語訳を通しては分かりづらい過去形との違いなどを理解させるようにしています。

 

 

このように、日本語訳を超えて、「過去と現在が繋がっていること」をしっかりと理解させるようにしてください

 

それができれば、初期に指導する「現在完了形はyesterdayやthree days agoのような現在とは切り離された過去を表す副詞(句)と共に用いることができない」ということの理解が容易になり、(間違っても「現在完了形は過去の副詞(句)と一緒に使えない」と表面的な現象のみを覚えさせようとはしないでください)

 

さらに、高校英語で登場するようなsinceやalreadyなどを伴わない現在完了形の文章と出会ったとき、用法判断に戸惑うのではなく、「過去の出来事を通じて現在どうなっているか」という現在完了形の本質を、想像力を働かせて読み解く力を養うことにも繋がるのです。

 

極端なことを言えば、そこまでできれば用法判断や和訳などは必要無いのだとさえ言うこともできるのです。

 

 

元NBAプロバスケットボール選手のマイケル・ジョーダンが、かつて自分も失敗を繰り返し続けたことで成功にたどり着いた、という趣旨のコメントの中で次の言葉を残しています。

 

I’ve missed more than 9000 shots.

 

これは一体何用法なのでしょうか?

 

「私は9000本以上シュートを」「外し続けてきた」とも「外したことがある」とも「外してしまった」とも受け取ることができます。

 

繰り返しますが、用法や日本語訳が問題ではないのです。

 

「9000本以上ものシュートを外した事実」が「現在の成功」に繋がっていることを彼の発言に感じ取ることが重要なのです。

 

英文の抱える呼吸を感じ取るとはそういうことです。

 

 

現在完了形は未来への橋渡しでもある

 

最後に、現在完了形の抱えるもう一つの本質をお伝えしておきます。

 

それは、現在完了形は未来への橋渡し的役割も担う、ということです。

 

たとえば、I have lived in Tokyo for three years.は、「今現在も東京に住んでいる」ことを意味しながら、同時に「現在住んでいるのだからこれからも住むであろう」ことも含意しています。

 

この発言をした瞬間に「住む」動作が突然終了するわけではありませんから、常識的な解釈において、多少なりとも未来に足を踏み込む性質を、現在完了形は有しているのです。

 

マイケル・ジョーダンの発言についても、I’ve missed more than 9000 shots.の裏側には、「9000本以上のシュートミスが現在の自分に繋がっている」ことを意味しながら、同時に「これからの未来をその自分の在り様で生きていく」ことまで感じさせます。

 

現在という時間概念は、そこで静止するものではなく、時の流れに乗って未来へと常に動き続けているものでもあるのです。

 

 

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